シャガールは、ロシア西方の町ヴィテブスクのユダヤ人家庭に生まれた後、モスクワ、ベルリン、パリ、ニューヨークなどに移り住み、天性の色彩感覚と枯渇することを知らない想像力で、型破りの愛と聖の絵画世界をつくりあげました。ヴァイオリン弾き、婚礼の祝祭、村人、牛・ヤギ・ロバ・鶏などのモティーフは、シャガールが幼少期に故国、とりわけ生地のヴィテブスクで見ていたものでした。忘れ得ぬ故郷の想い出は、ノスタルジアとなって、シャガールの芸術をつらぬいていきます。
1920年、マルク・シャガール(1887-1985)は、モスクワの国立ユダヤ劇場(1949年閉鎖)を装飾する仕事を依頼されました。この劇場はたった90人しか収容できない小さな施設でしたが、シャガールは劇場の壁をカンヴァス画で満たすことに心血を注ぎました。本展には現存する壁画7点すべてが出品され、なかでも横8m近い《ユダヤ劇場への誘い》は、シャガール初期を代表する圧巻の大壁画です。
この展覧会は、国立トレチャコフ美術館やパリの個人などの全面的な協力を得て、ようやく実現する回顧展です。シャガールの芸術は、幻想的で神秘的な絵画によって知られていますが、創作の根底にはユダヤ民族の悲哀と苦悩が横たわっていました。ユダヤ劇場壁画シリーズをはじめ、油彩、テンペラ、版画、タペストリーなど、約150点の出品作は、シャガールの芸術と人生の両面を存分にみせてくれます。
パリのシャガール 1924年頃
ベルリンでのシャガールと
ベラとイダ 1923年
二重肖像画のために
ポーズするベラ 1925年
開催期間 | 4月12日(土)〜5月25日(日) |
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開館時間 | 午前10時〜午後5時30分 ※展示室への入室は午後5時まで |
休館日 | 毎週月曜日 ※ただし5月5日は開館 |
観覧料 |
一般 1,100円(900円) 高校・大学生・70歳以上 500円(400円) 中学生以下 無料 ※()内は20名以上の団体および前売料金 ※収蔵品展、ロダン館も併せてご覧いただけます。 ※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方は、無料。 |
特別講演会 <講堂にて、聴講無料、申込不要> |
「形成期の芸術的環境—キュビスム、オルフィスムなど」 4月20日(日) 午後2時〜3時30分 講師:八重樫春樹氏(美術史家) |
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美術講座 <講座室、申込不要> |
「シャガール芸術とノスタルジア」 5月11日(日) 午後2時〜3時30分 講師:小針由紀隆(当館学芸部長) 「シャガールのヴァイオリン」 5月18日(日) 午後2時〜3時30分 講師:小林旬氏(静岡音楽館AOI学芸員) |
学芸員によるフロアレクチャー |
午後2時〜 展示室入口集合(申込不要・観覧券が必要となります) 4月26日(土) 展示作品を詳しく、分りやすくご説明いたします。 |