ヘッダー(ロダン)
ロダン 鑑賞の手引き
AUGUSTE RODIN Guide book

 

女性
femme

 

 同時代の彫刻家の中でも、ロダンの肖像制作の才能は抜きん出ていた。モデルの身体的特徴を正確に把握した上で、その人物の核となる個性や人柄を表現することを制作の本質としたからである。鋭い観察の結果、心理的な描写を施すことにロダンの創作の秘密があった。
 作品が売れなかった青年期には、ロダンは生活のための作品も並行して制作しなければならなかった。普仏戦争の後、1871年から77年にかけて、ロダンはベルギーのブリュッセルで、彫刻家カリエ=ベルーズらと建築装飾などの共同制作に携わった。《バラの髪飾りの少女》は、この時期に数多く制作された若い女性の胸像のシリーズに含まれる。頭髪にあしらった花飾りと首筋から肩をおおう巻き毛の曲線、軽く首を傾げた頭部、心もち開いた小さい唇がかもし出す甘美な雰囲気は、カリエ=ベルーズが示した装飾的で優美なロココ趣味を反映している。

《バラの髪飾りの少女》


《〈ラ・フランス〉習作》


《ベローナ》1879年 ロダン美術館

 ロダン作品のモデルとなった人物は老若男女にわたるが、特に女性の肖像は、作者との個人的関係をうかがわせる上からも興味深い。彫刻家カミーユ・クローデルは、その才能と情熱によってロダンの制作助手となったが、15年後にカミーユとの恋愛に終止符が打たれた後も、ロダンはその若さと美しさを多くの作品の上にとどめた。《〈ラ・フランス〉習作》は、フランス国家を擬人化した作品であり、1889年に開催されたモネとの二人展に出品された、《聖ゲオルギウス》頭部像との類似が指摘されている。ロダンはこれに肩と胸を加えて胸像形式にし、被り物と髪型を変えた。《ラ・フランス》が頭に被るのは兜、またはフランスを象徴し、共和制を意味するフリギア帽であるといわれる。同じように愛国心をテーマにしたものでも、妻のローズ・ブーレをモデルにした《国の護り》や《ベローナ》の激しさや猛々しさとは対照的に、モデルの古典的な顔立ちに由来する落ち着きと静謐を漂わせている。
 


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