《〈ラ・フランス〉習作》
《ベローナ》1879年 ロダン美術館
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ロダン作品のモデルとなった人物は老若男女にわたるが、特に女性の肖像は、作者との個人的関係をうかがわせる上からも興味深い。彫刻家カミーユ・クローデルは、その才能と情熱によってロダンの制作助手となったが、15年後にカミーユとの恋愛に終止符が打たれた後も、ロダンはその若さと美しさを多くの作品の上にとどめた。《〈ラ・フランス〉習作》は、フランス国家を擬人化した作品であり、1889年に開催されたモネとの二人展に出品された、《聖ゲオルギウス》頭部像との類似が指摘されている。ロダンはこれに肩と胸を加えて胸像形式にし、被り物と髪型を変えた。《ラ・フランス》が頭に被るのは兜、またはフランスを象徴し、共和制を意味するフリギア帽であるといわれる。同じように愛国心をテーマにしたものでも、妻のローズ・ブーレをモデルにした《国の護り》や《ベローナ》の激しさや猛々しさとは対照的に、モデルの古典的な顔立ちに由来する落ち着きと静謐を漂わせている。 |