《手に扇子をもち、ひざまずく花子》
1910年頃 ロダン美術館
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《花子のマスク》は、東洋的な顔立ちの上に刻印された苦痛を克明なまでに表現している。ロダンの伝記作者は、西洋人と異なる激怒の表情を花子が驚くほど長く保てたことを伝えている。またロダンは、花子の美の特質がその肉体の強さにあることを語った。一方、死に臨んだ苦悶の表情とは別に、放心したような平穏な花子の顔も、ロダンは作品に捉えた。それは、虚空を睨んだ激烈な顔を保つことに疲れた花子が、制作の途中に見せた表情であり、これら異なるふたつのタイプをロダンは交互に制作したと、花子自身が伝えている。
花子は、1921(大正10)年、2点の彫刻作品を携えて帰国した。それは、自分をモデルにした作品を譲ってほしいという依頼が叶わぬままロダンが亡くなった後、フランス政府に懸命に働きかけた結果だった。これら2点の作品は、現在は新潟市美術館が所有している。 |