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『鵜飼美紀 restless・restfull』展
公開展示を終えて−作家からのメッセージ


この展覧会では、作品をインスタレーションする作業を、公開展示として開館時間中に行いました。作家にとってはそれでなくとも緊張する作業ですが、公開展示の感想を鵜飼さんにお書き頂きました。
公開展示:2000.9.5〜7、10.3〜4
展覧会会期:2000.9.5〜12.24


公開展示をしている最中のエントランスホールでは、木枠に流しこんだゴムをあちこちにおいては歩き回り、また少し動かしては見る、こんなことの繰り返しでした。これを繰り返している時、何人かの方に声をかけていただきました。「これは何ですか?」「これからここに絵を描くんですか?」「片づけをしているんですか?」ほとんどの方が、床にばら撒くように置かれたゴムを見て「作品」というふうには見ることができなかったようです。

私は普段、銀座のギャラリーなどで個展を開催することがほとんどです。都内のギャラリーに足を運ぶ人は美術関係者が大半で、“現代美術”に触れることにとても慣れていますし、それらを語る言葉を知っています。そういった環境の中にいる私にとって、静岡県立美術館という広い空間での個展で、展示作業を公開するということは新しい体験でした。

現代美術に初めて出会う人々が往来する中で展示作業をし、時には話しかけられたり質問されたりする、広い空間での個展を前に緊張が高まっている私にとって、それは正直なところ期待よりも不安のほうが膨らむ出来事でした。しかし実際に公開展示中に何人かの方に声をかけていただいたことで、改めて自分がやろうとしていること、考えていることを明確に言葉にしていく必要性を感じ、自分自身に問い直していくきっかけとなりました。

言葉にしにくいぼんやりとした部分を、無理をしてでも言葉に置き換えて見る、それはとてもエネルギーがいることですが、ぼんやりとしていた部分にだんだんとピントがあっていく感触を得ることができ、これから先に作品を作りつづけていく上でとても貴重な体験になったと考えています。

絵画やロダンの彫刻が並ぶこの美しい美術館では、ゴムや水を張ったガラスの器を使って私が試みたことは、かなり異質に映るかもしれません。私の作品は、具象絵画やロダンの彫刻のように、何を指し示しているのかをすぐに見て取ることができにくいものです。ゴムや無数のガラスの器たちが館内に点在することによって、ある場所では心地よい解放感を得たりすることと思います。自分の感覚のゆらぎを自覚し、そのゆらぎがたった一枚の薄いゴムや、普段よく目にするガラスの器と水によってもたらされていることに驚き、そして少し不安になったりする、そんな感触の展覧会と感じていただければうれしく思います。

(鵜飼美紀)


エントランスホールでの展示

ロダン館デッキでの展示

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