田中敦子―未知の美の探求 1954−2000―.
2001年7月28日(土)〜9月9日(日)
「誰でもカンバスに絵具の一筆をおくことが出来るし、そこにどんなものを表現するのも自由である。誰も知らなかった、自分も知らないものを描いてみるのが、一番興味深い。」
上記は、1960年1月の『芸術新潮』に寄せた田中敦子の文章からの引用です。「未知の美の探求」と名づけられたこのエッセイは、当時関西の前衛美術運動の先端を走っていた具体美術協会の一員として、すでに強烈な個性を発揮していた田中の常に変わることのない指針を示すものとして注目されます。
1932年、大阪に生まれた田中敦子は、数字をモティーフにした作品や、音や電気を使った作品を次々に発表し、斬新さや奇抜さで知られる具体美術協会の中でも、活動の初期から群を抜いて人々の耳目を集めました。その後、円と線による独自の絵画スタイルを確立し、フランスの批評家ミシェル・タピエから高い評価を受けことを契機に、具体の重要性を担う作家として欧米で名を高めていきます。1965年に具体を退会しますが、止まることを知らない創作意欲と飽くことのないオリジナリティの追求によって、1980年代以降、国内外での戦後美術の検証を目的とした大規模な展覧会では、欠くことのできない存在となっています。
本展は、まさに未知の美の探求といえる、田中敦子の40年にわたる活動の歩みを包括的に紹介する、公立美術館では初の試みです。具体参加以前から近年まで、その代表作を一堂に展観するとともに、習作や記録映像、未発表の関連資料も併せて出品します。また、1950年代に制作され、具体関連の展覧会で発表された作品の再制作と展観も大きな話題のひとつです。
(当館学芸員 南 美幸)
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