《移動子供ワークショップ報告》
館内の実技室で行われている粘土のワークショップが好評なのを受けて、今年度その出前版?を実施!
昨年の5 月から夏休みを挟んで10 月まで、県内津々浦々、31 の小学校に8000 人を超える子供達を訪ねていった。
5 月1 日伊豆は下田の南中(みなみなか)小学校朝7 時、校庭を横切りながら「はじまりはじまり」と心の中で拍子木を打つ。その手に粘土と書かれたのぼりを持っているわけでもないが、どこか懐かしい旅回わりの一座をだぶらせている。“何やら楽しそうなものがやって来る”と。
図工室にシートをひき詰め、1 トンの粘土(今回主役に抜てきしたことは一座の親分から伝えてはあったが、これから続く長旅は知る由もない)に「待ってました」とばかりに飛びついた子供達。「こんなにたくさん粘土を見るのは初めて」と言って、身体を使って質感や重さを楽しんでいる。次は粘土の上で黙想!(10
秒)、はやる気持ちを落ち着かせるのだ。このあたりで美術館の事にも触れる(あまり知名度はないが、来たことがある子供達もいたのは嬉しかった)。そうしてこちらから提示したアイデアを切っ掛けにして、自分でつくったものが周りと繋がってシートいっぱいに広がってゆく。それを大きく環になって鑑賞(各自、制作したことの確認である)。最後は掃除、粘土の養生をする(これに校長先生自ら腕を捲り、参加していただいたことが幾度かあったことは、このワークショップの関心の高さを物語る一例だろう)。
基本的には館内の実施例をなぞっていったわけだが、回を追うごとにその内容の発展を目指した。それは主役自身の豊かな可能性を、子供達とのコミュニケーションの中から新たに引き出すことが出来れば、“より有効な出来事”になることに確信があったからだ。それは、われらスタッフが毎回新鮮な気持ちを持って子供達に接することにも、有効に作用することとなった。
10 月31 日遠州は引佐の渋川小学校体育館。ここに木の棒を芯にして5m を超える粘土のタワーが出現した(5 月の段階では想像できなかった事)。全校児童40
名足らずのこの小さな小学校で、無事ワークショップがすべて終了したことを、そのタワーから感謝を込めて発信した。
(ワークショップインストラクター 石上和弘)
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