この展覧会は、4人の若手現代美術作家が、当館の収蔵作品約2000点の中から気になるものを自由に選び出し、それぞれ自分の作品とともに同じ空間に展示する、今までにない現代美術展です。キーワードは「風景」。これは当館の作品収集のテーマでもあります。4人の作家が自分流に「風景」という言葉と当館のコレクションを読み解き、自分の作品と対置させて行きます。
大岩オスカール幸男氏は時代や環境の違いをもつ作品から共通点をみつけだし、自作の《戦争と平和》と狩野探幽の《一ノ谷合戦・二度之懸図屏風》を対置。日高理恵子氏は幅6mの《樹を見上げてVII》に草間彌生の白い網目を描いた《無題》を置いて、自身が追求する空間性の問題を考えます。吉田暁子氏はガラスケースの中に池大雅の《龍山勝会・蘭亭曲水図屏風》などを入れ、ガラスの上にインスタレーションを行って、見ることと気づくことを吉田流に提示。菱山裕子氏はロダン館で《バルザックの頭部》に《いない・いない・ばあ》をユーモラスに近づけます。これらは4人の展示のほんの一例。エントランスホールから展示室、ロダン館まで全館で、4つの視線とそれを見る観覧者との壮大なバトルが繰り広げられることになるでしょう。
「風景」は風景画だけを意味するものではありません。コレクションがあり、作家が居、観覧者を迎える美術館そのものも一つの風景と考えます。それらをつなぐ「+」の役目をするのが企画者である学芸員と、地元学生を中心とするボランティア「ヒキダシタイ」です。展覧会を見たその「気持ち」を、忘れないうちにそっと引っ張り出して、ちゃんとお家に持って帰れる思い出にするお手伝いを「ヒキダシタイ」が企画。大人数を相手にしたワークショップではなく、見た人ひとりひとりの思いを大切にする、やわらかでパーソナルなプログラムです。
あなたがいて初めて始まる「今、ここにある美術館」という風景。夏の思い出を1つ、今ここでいかがですか?
(当館学芸員 李 美那)
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