吉田博 展
今から百年前の日本の風景を想い浮かべてみましょう。街道沿いの藁葺き屋根の家や山間を流れる清らかな川、前人未踏の深山幽谷。吉田博は、こうした日本の風景を描くため、鉛筆と画板をかかえて、朝はまだ暗いうちに出発し、日が暮れるまで、現在の東京近郊を中心として、日光、富士山頂など日本各地を旅しました。彼が描く鉛筆写生は、素早く正確な輪郭線とわずかな陰影とによって建物や山々などの対象を捉えており、「あるがままの風景」を描いたものとして近代絵画史上、たいへん重要な役割を果たしました。また、こうした吉田の鉛筆写生は、水彩画、油彩画、木版画の制作にも通じるところがあります。百年前に描かれた、今はなき日本の風景を懐古し、その魅力を再発見してみてください。
※会期中には、学芸員による作品を前にしたフロアレクチャーを行います。
(当館学芸員 泰井 良)
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吉田博《荒沢(日光)》
明治30年-32年
紙、水彩 51.2×29.7cm |
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