ある日曜日、両親と2人の小学生の子供と一緒に静岡県美に来た4人家族。「今、ここ」展を見たあと、お母さんと子供たちが「談話室 借景」でワークショップ「思いで帖」に参加し、スタッフとおしゃべりしながら、往復葉書き大の紙に好きな色を塗ろうとしていたら、なんだか地鳴りのような低い音が。「?」「?」「あ、うちのお父さん、いびきかいて寝てる!」見れば、談話室の隣の窓際のソファで、お父さんがひっくり返って気持ちよさそうに寝ているのでした。
今までは考えられないこのリラックスムードを作っているのは、「今、ここ」展ボランティアスタッフ「ヒキダシタイ」のメンバーたち。週末は「ヒキダシタイ」の面々が、3つの談話室をオープンさせています。畳敷きやカウンターバーなど、談話室にも趣向を凝らし、この美術館では今まであまり見かけなかった若い人たちが、展覧会を見た人たちを相手に、あちこちで楽しげにみんなの話を聞きながら、展覧会の感想を缶バッジにしたり、小さな絵を描いて思い出に郵送したりするワークショップを実施しています。
「ヒキダシタイ」は、地元の美術系学校3つの学生と卒業生があつまって3月にできた「今、ここ」展のボランティアグループで、「チーム下剋上」と「チームでこぽん」の2チームがあり、それぞれ得意分野を生かして活動しています。チーム下剋上は展覧会場でお客様が手にするパンフレットや、展覧会とヒキダシタイを紹介するビデオを制作。チームでこぽんは実際にお客様と対面し、前述のようなワークショップをすすめます。
美術館が見る人のためだけの場所ではなく、美術を学ぶ学生が活躍する現場となったこの夏。当館ボランティア歴15年の熟年スタッフの一言、「若い人が居るっていいわねえ」は、彼らのハートが美術館の空気を一変させたことを物語る言葉なのでした。
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