ローマ散策
PartII展−ピラネージのみた夢−
1月2日(金)〜2月15日(日)
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永遠の部、ローマ。この都市は今日と同様18世紀においても、やはり人々の心を惹き付ける場所でした。ここにはローマ・カトリックの大本山ヴァチカン、古典古代以来の遺蹟などの壮麗、美しい庭園を伴う貴族のヴィラ(別荘)や田園が広がる牧歌的な側面、そして人々の日々の生活とが共存していました。街を彩るこの豊かな陰影に魅了された旅行者は、再びこの地を訪れたいという気持ちをかきたてられていったのです。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ(1720−1778)は、このローマに惚れ込んだ一人です。版画家として彼は、ローマに残る名所旧跡を、生涯にわたって描き続けました。さらに彼は「ローマ」の姿を明らかにするため、発掘を自ら手掛ける考古学者であり、また建築家でもありました。
そのピラネージにとってローマは、単に正確な描写や発掘の対象ではありませんでした。この部市を劇的に表現することを望んだ彼は、そのために様々な誇張を行い、強烈な透視図法を駆使することを厭いませんでした。また考古学的な作品でも、厳密な考察の間に幻想に基づく古代ローマの姿が時に挿入されています。こういった彼の制作態度からは、ただ「正しい」ローマの姿ではなく、彼にとっての「ローマ」、彼がこうあって欲しいと望んだイメージこそを、我々は強く感じることが出来るのです。
「ローマ散策PartII」展は、ピラネージが抱いていたこの「ローマ」というイメージを、約120点の作品でご紹介しようというものです。同時代のローマを描いた『ローマの景観』や、『ローマの古代遺跡』『壷、燭台、石棺…』『古代ローマのカンプス・マルティウス』などの考古学的な作品、『牢獄』のような幻想的な作品など、いずれもピラネージの求めてやまなかったローマというイメージによって貫かれています。本展では、彼に影響を与えた劇場デザインの世界も合わせて展示。ピラネージの見た「ローマ」という夢の世界をご堪能下さい。 |
(当館学芸員 新田建史) |
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G.B.ピラネージ
『ローマの景観』より
《トレヴィの泉》 |
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現在のトレヴィの泉 |
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G.B.ピラネージ
『ローマの景観』より
《ガイウス・ケスティウスの
ピラミッドとサン・パオロ門》 |
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現在のガイウス・ケスティウス
のピラミッドとサン・パオロ門 |
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