●本の窓
『小鳥の肉体 画家ウッチェルロの架空の伝記』
ジャン=フィリップ・アントワーヌ著 宮下志朗訳
白水社 1995年初版
遠近法の研究で名高いイタリア・ルネッサンスの画家、パオロ・ウッチェルロ。この本は彼の伝記なのですが、副題にある通り「架空の」伝記です。著者は想像力をめぐらして、史実として伝わっている事柄に加え、古いイタリアの民話や説話、さらには異なる時代の画家の説話までをも話に織り込んでいるのです。ほんの数ページずつのエピソードを積み重ねた本ですが、さながら話の玉手箱といった趣きがあります。さらに本書には、マルセル・シュウォッブ著の「絵師パオロ・ウッチェロ」も所収。本書の著者が強く意識していたであろうこの作品も、やはり架空の伝記です。読者は本書をひもとくことで、ウッチェルロをめぐる様々な物語の森に入っていくことになるでしょう。お薦めします。 |
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(当館学芸員 新田建史) |
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