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平成17年度 新収蔵品のご紹介



静岡県立美術館では、美術館活動の基盤としてコレクションの充実に重きを置いています。収蔵作品の調査研究をすすめるとともに、継続的に新たな作品を加えてコレクションを活性化し、さらに魅力ある美術館として活動していけるようつとめています。
  昨年度は新しく14点の作品がコレクションに加わっており、うち3点はご寄贈いただいた作品です。ご寄贈者をはじめ、美術館の運営をご支援くださる皆様にあらためて感謝の念を示したいと思います。
  ご寄贈いただいた徳川慶喜の《風景》は、昨年度末の企画展「静岡ゆかりの画家たち」でひと足お先にご紹介いたしましたが、その他の作品は「新収蔵品展」が初のお披露目となります。この機会にぜひ美術館へ足をお運びくださいますよう、お願いいたします。

【ロダン】
  素描家。それは、彫刻家として世に知られるロダンの、もう一つの顔です。パリのロダン美術館には7千点に及ぶデッサンや水彩画が収蔵されており、この芸術に寄せたロダンの情熱を物語っています。
  書籍の挿絵の仕事は、素描家としてのロダンの延長線上にあり、ロダンは生涯に4種の本の挿絵を引き受けました。友人ミルボーの著作『拷問の庭』のために制作した挿絵は、その3番目にあたります。奔放な性の解放を謳い、常識的なモラルを打ち破った本の内容に沿って、ロダンは20点のデッサンを描き、それを元に版画家オーギュスト・クロがリトグラフを制作しました。晩年のロダンは、モデルの一瞬の動きを把握してスケッチすることに並々ならぬ関心を持っていました。女性の裸体を自由に捉えた結果、これらの挿絵に見られる空想的かつ抽象的なスタイルは、ロダン晩年のデッサンの特徴を示しています。
(主任学芸員 南 美幸)

【西洋画】
  新たに収蔵されたのは、ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ作の版画≪納骨堂≫です。古代ローマの納骨堂の廃墟を、想像で描き出してあります。ピラネージはローマに憧れ、生涯のほとんどをこの街で過ごしていますが、本作は彼が故郷のヴェネツィアからローマへと出てくる、まさにその頃の作品です。まだ20代の若々しいタッチと、すでに熟練した銅版画の技量とを、存分にお楽しみいただける逸品です。詳細な詞書を入れて出版する前の、作者によるプルーフであるのも、本作品の非常に貴重な点です。
(学芸員 新田建史)


オーギュスト・ロダン
《ミルボー作『拷問の庭』》より

ジョヴァンニ・バッティスタ・ ピラネージ ≪納骨堂≫

【日本画】
  日本画では2点の優品が収蔵されました。浦上玉堂は、日本文人画のみならず、江戸絵画の中で欠かすことのできない個性派の画家で、かねてより収蔵が望まれていました。新出の《抱琴訪隠図》は、玉堂70歳頃の作で、自由奔放な筆遣いが冴えた山水画の傑作。墨のトーンと運筆の変化を駆使し、ピンと張り詰めた緊張感をただよわせています。琴を抱えた高士が山中の隠者を訪ねるという画題は、琴士でもあった自身を重ねているのかも知れません。水墨画の魅力を余すことなく伝えてくれる名品です。
  小林清親は、幕臣として明治初年に静岡に身を寄せた静岡ゆかりの画家。今回収蔵される《川中島合戦図屏風》は晩年の肉筆画―これまでに類例のない大作で、貴重な新発見作品です。陰影をほどこしたユーモラスな人物表現には、錦絵漫画で培った清親の画歴の片鱗をのぞかせていますが、そのユニークな表現は、現代人をも引き込む魅力をもっています。
(主任学芸員 飯田 真)

【日本洋画】
  日本近代洋画では、3件のご寄贈をいただきました。寄贈者の方々には、改めて感謝の念を表させていただきます。誠にありがとうございます。
  江戸幕府最後の将軍として知られる徳川慶喜の作品《風景》は想像上の風景を描いた油彩画です。夕暮れの空や民家の灯、水面での光の反射などを叙情的に描いたもので、慶喜の油彩画としては国内6例目の貴重なものです。
  川村清雄《水辺》は作者中期の油彩画です。当館で既に所蔵している初期のデッサンと後期の大作の間を埋めるものとして意義深い作品で、作者独特の日本的雰囲気のある油彩画です。
  《裏のみかん山》の作者小栗哲郎は掛川出身の画家で、中川一政、石井鶴三らとともに春陽会で活躍しました。第二次世界大戦を機に静岡に戻った後は、中川雄太郎らと写実派協会を結成し、県の洋画壇をリードしました。本作は静岡市内の作者アトリエ付近にあったみかん山を描いたもので、深く鮮やかな緑の色彩と、やわらかであたたかみのある描写が魅力的な作品です。
(学芸員 村上 敬)


浦上玉堂《抱琴訪隠図》

徳川慶喜≪風景≫


information 
●収蔵品展

新収蔵品展
*GW(4月25日〜5月7日)は若冲を特別展示
4月11日(火)〜5月7日(日)

描かれた女性たち+小杉文庫
5月9日(火)〜6月4日(日)



●ロダン館第二展示室

彫刻を「撮る」T
―ブランクーシの写真・自作への視線
6月6日(火)〜7月9日(日)





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