「石田徹也 -悲しみのキャンバス」展
2007年7月24日(火)〜8月19日(日)
石田徹也は、1973(昭和48)年、焼津市に生まれました。多くのコンクールで受賞し、将来を嘱望されましたが、2005(平成17)年5月に踏切事故にあい、不帰の客となりました。しかしNHK「新日曜美術館」で紹介されたことをきっかけに注目を集め、画集の増刷や追悼展が相次いで開催されています。
石田徹也の作品には、どの絵にも同じ顔をした短髪の男性が登場します。その青年が機械や日常の風景と合体し、物寂しげな表情を見せています。それはまるで、現代社会における様々な問題にからめとられて身動きできず、しかしそのなかで生きていくしかない個人の悲しみや、辛さ、孤独を表しているようです。画中の青年は作家の自画像と思われますが、見る人は、その顔に自分を投影し、生きることの寂しさを共感するのです。石田徹也の作品がとりわけ若い人たちに人気があるのは、絵に青年のナイーブな心と共鳴する、静かで直截的な力があるからでしょうし、また若者をとりまく現代社会の閉塞感も一因かもしれません。
今展は、絵画作品に加えスケッチブックなど合計約100点を展示する過去最大規模の回顧展となります。展覧会準備のために、ご遺族のもとに遺された作品、資料などを拝見させていただきました。何冊もある日記やスケッチブックのなかに、水爆実験の被害を受けた第5福竜丸の事件と、それを取り上げて世界に告発した画家ベン・シャーンについての記述が見られました。大きな社会の動きの中で翻弄される個人の尊厳。そして、その不条理を告発する芸術家。石田徹也は、かつてふるさと焼津が巻き込まれた事件について知り、社会と個人の関係について考えるようになったようです。その思いが、絵筆を通して、彼独自の作品となりました。しかしながら、その画業を成就するには、青年画家の人生はあまりに短すぎました。冥福を祈りつつ、展覧会を準備したいと思います。
(当館主任学芸員 堀切正人)
《囚人》1999年 アクリル、キャンヴァス CBコレクション蔵
《体液》2004年 アクリル、キャンヴァス CBコレクション蔵
information
会場:
静岡県立美術館・県民ギャラリー
主催:
石田徹也展実行委員会・静岡県立美術館
協賛:
株式会社 資生堂
後援:
NHK静岡放送局、企業メセナ協議会
協力:
Bコレクション、高橋コレクション、求龍堂、ギャラリーQ
関連イベント・特別講演会
講師:
山下裕二氏(明治学院大学教授、美術評論家)
日時:
2007年8月5日(日) 時間:14:00〜16:00
講堂にて 聴講無料 申込み不要
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