美術出版社 1987年初版発行
当館ロダン館内部
ブランクーシとイサム・ノグチに陶酔していた私の学生時代に出会った本著は、近代から80年代の彫刻に注目しながら、表現者・作品・鑑賞者の関係を自己というキーワードで明晰に解析した高著である。作ることに日常と自己を重ね合わせていたその頃の私にとって、見ることでも自己の輪郭が立ち現れる瞬間が提供されるということに気づかせてくれた著書でもある。本著の中でのオーギュスト・ロダンについての評が「・・・永遠の現在を突き崩し、時の移ろいそのものを彫刻に導きいれる発端を作ったところにこそ、ロダンの意義が認められる・・・」(P65抜粋)とあることも付記しておきたい。
(当館主査 鈴木雅道)