昨年度はロダン館に糸を張ったティーンエイジャーによる自主企画ワークショップ「ART(! ArtRoom for Teen's !)」、今年度は実技室横の中庭に糸を張りました。その糸は、本年3月11日の東北関東大震災で津波に浸かってしまった糸や紐(宮城県石巻市 キヌヤ笑店 石島氏提供)です。7月18日(月・祝)に行った企画会議に出席した大学生や中学生は、汚れた糸を手にとり、言葉もなくそれを見つめていました。約10名の企画者達は、その後協議を重ね作品タイトルを《つながり》と決めました。東北と静岡の人をつなげること、それが被災した糸に象徴されていることを確認し、早期復興の願いを込めて、東北の自然や街が美しい虹に包まれる様子を表現しようということになりました。
8月16日(火)~21日(日)に、企画者の大学生や中学生が中心となり、糸を張りました。ファシリテーターは当館インターン岩倉牧さん。中学生をうまく誘導し、約400名の一般来館者に糸を張ってもらう計画を立て、さらにNHK静岡放送局の取材にも対応するなど、表裏なく「ART!」をどっぷり運営してくれました。
同じ週、県民ギャラリーでは「Shining World展」を開催していました。この展覧会の企画は、被災した糸から始まりました。糸を提供してくれた石島氏の「・・・糸を買い取るお金で、家族を亡くされた方や家をなくされた方、子供達に支援してあげてもらいたい・・・」という言葉に触発され、いわき市や石巻市の小学校に絵具や画用紙を送り、仙台市から作家を招待してワークショップを開催し、さらに岩手県立美術館の活動状況を広報するための団扇(裏面に絵を描いてもらい当館に送ってもらう)を作りました。
その作品群を展示したのが「Shining World展」です。団扇は340点余が集まり、ギャラリー天井部から吊って展示しました。絵具と画用紙を送ったいわき市立湯本第一小学校からは希望に満ちた絵画が送られてきました。被災した糸はもちろん、同封されていた石巻市の被災直後の新聞や支援物資に貼付されていたシールなども展示しました。夏休み子供ワークショップの作品も展示し、子供達の笑顔や頑張っている姿が思い浮かぶ明るいギャラリー風景にすることができました。
石巻市はもとより、多方面のつながりが始まった実感のもてるイベントとなりました。
静岡市清水区にあるエスパルスドリームプラザはご存知ですか?8月11日(木)と18日(木)、1階スクエアという広い吹き抜け空間において出張美術講座を開催しました。
内容は、"古代エジプト文字で暗号をつくろう!"と"ロダン体操inドリプラ"です。古代エジプト文字に関するワークショップは、昨年度の当館企画展の関連イベントで好評だった古代エジプト文字を五十音対照表に照らして石に彫ったり、ストラップにしたりする内容でした。
ロダン体操は、他県の美術館から視察にみえるほど特殊で優れた鑑賞方法ですが、不特定多数のお客様に参加を呼びかけて体操を行うのはこれが初めてでした。二日間で、計340名の方が当館のワークショップやロダン体操を楽しんでいかれました。
今後もこのような連携を積極的にすすめ、観光ルートの提案につなげられるよう研究する必要を感じました。
(当館学芸課主査 鈴木雅道)