本作は、山梨県と静岡県富士宮市との境、天子山地の最高峰・毛無山を作者自宅のアトリエから描いたものである。
画面下三分の一に荒涼とした大地を配し、広大な空との境界に毛無山を描く。緑、青、赤褐色といった鮮明な色彩と伸びやかで力強い筆使いにより、雄大な自然を表わしている。
本作について、曽宮は「もう視力がありませんでしたから、想像で描きました。(中略)これは毛無山を描いたもののなかで一番出来がいいものです。」と語り、絶筆として自らの画業に位置付けていた。しかし最近の調査により、これ以後に描かれた同じ主題の作品が発見された。彼の画業における絶筆の意義を再検証する必要がある。
(当館上席学芸員 泰井 良)
曽宮一念
《毛無連峯》
1970(昭和45)年
キャンヴァス、油彩
53.0×72.7cm