アマリリス Amaryllis

2012年度 春 No.105

美術館問わず語り
京都国立博物館での研修生活


調査で訪れた海住山寺の雪景
 昨年4月、京都国立博物館(以下、京博)での研修を終え、静岡に戻って参りました。それから早くも1年になりますが、遅ればせながら研修生活について簡単にご報告申し上げたいと思います。
 研修は、担当していた伊藤若冲展の閉幕後、平成22年6月からの10ヶ月間にわたりました。その間、学芸部連携協力室という部署にデスクをご用意頂き、国立館という大きな組織ならではの諸業務について、時にお手伝いをさせて頂きながら、見聞を広めることができました。もちろん、受入れ館である京博職員各位の温かな気遣いと、多大なご配慮・ご指導あってのものであることはいうまでもありません。
 昨年秋の京博名品展は、研修中に打合せを重ねながら出品作の選定を進めることができましたので、これも研修の一つの成果であったといえると思います。
 もう一つ、研修期間中、時間を見つけては美術商・個人所蔵家のもとへと通うように努めました。美術商が多く所在する京都のこと、とても網羅的にというわけにはいきませんでしたが、多くの人・作品との出会いがありました。博物館において知遇を得た他館学芸員や研究者を含め、そうした出会いは何物にも代えがたい財産です。
 今秋開催の「江戸絵画の楽園」展では、そんな新たに出会った作品の出品も予定しています。ただ、中にはその後海外に出てしまったものもありました。日本美術の海外流出―という言葉が適当かどうかは分かりませんし、必ずしもネガティブにばかり捉える必要もないかもしれません―が、まるで過去の出来事であったかのような語りが、最近でも某新聞記事でなされていましたが、全くそんなことはありません。美術品がいま現在も絶えず動いているという当たり前のことも、改めて痛感した研修でした。
(当館主任学芸員 福士雄也)

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