アマリリス Amaryllis

2012年度 夏 No.106

500万人が感動したコレクション
日本油彩画200年−西欧への挑戦
〜黒田清輝、佐伯祐三、岸田劉生が求めた日本の絵画〜
6月9日(土)~7月22日(日)

 日本人は「何故、油彩画を描き、また描き続けてきたのか」。本展覧会は、こうした疑問から始まりました。当館コレクションに他館からの借用作品を一部加えて構成される本展は、日本の油彩画史を概観するものになっています。
 まず、第1章「油彩画前史~近世の油彩画~」は、司馬江漢を中心に、江戸期に長崎を通じて油彩画を学んだ絵師(画家)の作品を紹介します。油彩画の本格的導入は、明治になってからですが、その胎動は、すでに徳川吉宗による禁書解禁政策の緩和によって西洋の文物が輸入されたことに始まっています。
 つぎに、第2章「油彩画の開拓~明治期の洋画家たち~」では、黒田清輝、川村清雄、五姓田義松、和田英作など、近代洋画を確立した画家たちを取り上げます。この時期には、東京美術学校西洋画科の開設、文展(文部省美術展覧会)、また黒田清輝による白馬会の創設など、本格的な西洋美術の受容、導入が進められました。
 最後に、第3章「油彩画の隆盛~大正から昭和へ~」では、この時期に西欧から伝えられた新しい理念や技法を自らの作風に積極的に取れ入れていった画家たちを紹介します。大正から昭和期にかけては、ポスト印象派、フォーヴィスム、キュビスムなど新思潮がつぎつぎと日本にもたらされました。また、そうした時流を反映した洋画団体が数多く結成され、まさに「油彩画隆盛」の時代を迎えました。
 このように江戸から明治、大正、昭和にかけて、日本人洋画家たちは、西欧の技法である油彩画に挑みながら、日本の気候や風土にあった"日本人の油彩画"を制作しようとしてきました。 
 本展では、そうした日本人洋画家の足跡を作品によってたどりながら、日本人にとっての油彩画の意味を考えます。
(当館上席学芸員 泰井良)


黒田清輝 《赤髪の少女》
明治25年 
油彩、キャンヴァス
東京国立博物館蔵
(画像提供 東京文化財研究所)

鹿子木孟郎 《ショールをまとう女》
明治39-40年頃
油彩、キャンヴァス
府中市美術館蔵

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