アマリリス Amaryllis

2012年度 夏 No.106

 左右に生い茂る丈高い樹木。前景には、山羊を追いながら上り道を進んでゆく1人の男。その行く手には、古代風の衣装を着けた、意味ありげな2人がいる。中景は所々に屋敷や滝が姿を現す鬱蒼とした森で、空との境には、遠くの山と彼方の地平線が見晴らせる。縦長の画面を活かした巧みな構成である。
 サビーニはローマの北東に位置する地域の名で、古代ローマ建国以前に住み着いた民族に由来する。デュゲは、17世紀フランスの大家ニコラ・プッサンの義理の弟で、初め義兄に師事した。その作品はイギリスで高い人気を誇った。
 本作は最近の修復の結果、オリジナルの色調や緻密な筆触を取り戻した。「ユベール・ロベール」展にも出品されるので、17世紀イタリア風景画のエッセンスをお楽しみいただきたい。

(当館上席学芸員 南 美幸)

狩野永岳《富士三保松原図》の画像
ガスパール・デュゲ《サビーニの山羊飼い》
1669-71年
油彩、キャンヴァス
68.5×49.5cm

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