今年は『国宝 鑑真和上展』の内容を取り入れた三種類のワークショップを開催しました。
「君だけの仏像<ヒーロー>あらわる!」では、仏像の木型に紙を貼って作る仏像型の張り子を製作しました。当館職員と静岡大学教育学部美術科の学生の皆さんで計20個の仏像木型を用意。また張子に使う材料と製作工程等は浜松張子工房二橋加代子氏に指導をあおぎました。
7月29日〜30日、7月31日〜8月1日の2回実施したこのワークショップでは、張子製作はもちろん、乾燥させている時間を使って学芸員によるフロアレクチャーやプロジェクターによる仏像紹介、塗り絵、仏像の格好をして写真撮影、寄木造りを模した立体パズル(協力:東京国立博物館)と盛り沢山でした。学芸員の話に聞き入る子供達の真剣な眼差しと、集中して張子を作る緊張感溢れる表情が印象的でした。
「ファミリー鑑賞会スペシャル」は、家族二世代・三世代のために考案した鑑賞プログラムでした。最初に世代別(祖父母、父母、子)に分かれ、感想等を専用シートに記入しながら鑑賞しました。その後、机上でそのシートを家族で見せ合います。シートには作品写真が貼ってあり、3枚合わせて初めて一つの作品になるというもので、世代別の見方・感じ方の違いを実感できるようにしてあります。8月2日の夜間開館時間をフルに使い、食事もワークショップの一部にしてしまったこの企画では、終始、家族の楽しい笑い声と、子供の鋭い発見や感想に感心する大人達の姿が見られました。最後に家族単位で観覧した際は、子供に案内してもらう祖父母の姿あり、父母が『鑑真和上坐像』をみて詠んだ句を一家で味わう姿あり、というようにそれぞれの家族で味わい方を発見し展覧会を楽しんでいる様子が見られました。
何と言っても、この日のスペシャルたる由縁は、十七夜山・普茶堂による普茶料理(中国風精進料理)が特別に食べられるということでした。実際に、唐招提寺でも調理し、ダライ・ラマにもふるまったという普茶堂の料理は、「目でも味わいたいから部屋を明るくして欲しい。」と要望が出るほど、見た目も味も存在感のあるもので、満足していただけた様子でした。
「ぴったんこガンジン!」は『国宝 鑑真和上展』出品作品について、子供が考えたクイズに親がテレビ番組の解答者に扮して答えるというワークショップでした。午前中、子供達が展覧会場で作品を見ながら様々な発見をし、それをクイズにしていきます。その間、親達は学芸員から、どんなクイズが出されても解答できるよう詳細なレクチャーを受け、準備をしました。
午後、子供達は如来、菩薩、明王の格好をして登場し、クイズを読み上げます。親達はレクチャーを書きとめたメモを見て、時には苦渋の表情を浮かべ、時には笑顔で、解答していきました。全員がクイズを出した後は家族で再度観覧。子供達は、感じたこと、発見したことをうれしそうに説明していました。
さて、ここで問題です。《国宝の『金亀舎利塔』の上部鎖についている鈴の数は何個?》これは子供が作ったクイズの中で、親達が全員答えられなかった問題です。
総じて、子供達の鋭い観察眼と感性に目を見張った数日間でした。
(当館学芸課主任 鈴木雅道)