アマリリス Amaryllis

2009年度 秋 No.95

出張美術講座に向けて

学校連携普及事業は、これまで実技室での粘土教室・絵の具教室など「実技系」を活発に行ってきましたが、これを機会に美術館の財産、すなわち収蔵品を生かした「鑑賞系」の充実を図っていこうと考えています。
ところで「連携」という言葉からは、ついつい美術館に足を運んでもらうことを連想しますが、授業の中で美術館に来てもらうには、授業時数のこと、経費のこと、安全面の確保など、多くのハードルを越える必要があります。そこで、発想を転換し、美術館側から学校におじゃまして児童・生徒に直接美術館や美術作品の魅力についてお話をさせていただく「出張美術講座」を行い、保護者との来館を促していくことにしました。
「出張美術講座」を実施するためには、まず教師に興味を持ってもらうことが不可欠です。また、児童・生徒に興味を持たせ、美術館に行って本物を見てみたいと思わせるような教材の準備も欠かせません。
昨年度末より収蔵作品のレプリカ、紙芝居、パズルなどを作成するとともに、その活用方法について研究を進めています。今回は収蔵作品パズルと、紙芝居「カレーの市民」について紹介します。

事例1 紙芝居「カレーの市民」〜「ロダン体操」〜「ロダン館ななふしぎ」

来館に先立ち、学校で《カレーの市民》について紙芝居で勉強しました。学芸員からさらに詳しいお話を聞き、静岡県の歌「しずおか賛歌 富士よ夢よ友よ」の音楽に乗せて体を動かしました。ロダン彫刻のポーズを取り入れた体操で、《カレーの市民》も出てきます。
美術館では7枚のカードを受け取り、そこに書かれたクイズを解きながらロダン館を回ります。最後の答え合わせでは、紙芝居とロダン体操で勉強した作品の前でポーズをとってみました。

紙芝居の写真1

事例2 県立美術館収蔵品パズル

パズルは6種類あり、作品はエントランスの「名品コーナー」「収蔵品展」で比較的目にすることが多く、子どもたちが興味を持ちそうなものを選びました。
最初に6種類の作品を黒板に並べ、自分の好きな作品を選び、その理由を発表してもらいました。学年によって選ばれる作品の傾向は全く違っていて、高学年の児童にはクロード・モネの《ルーアンのセーヌ川》が圧倒的に支持されました。
個人でパズルを組んでいくよりも、2人で協力して取り組んでいく方が子どもたちには楽しいようです。パズルをやってみることで、最初は気づかなかったものをたくさん見つけることができました。

また当館は平成21年11月9日より、改修工事にともない約4ヶ月休館します。美術館では休館中も多くの子ども達に美術に触れる機会を持ってもらえるよう、オリジナルの教材を準備しておりますので、休館中もぜひご利用ください。
(当館学芸課主任 岡崎隆司)

県立美術館収蔵品パズルの写真1

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