アマリリス Amaryllis

2009年度 冬 No.96

本の窓 「白隠——禅画の世界」 芳澤勝弘著

中公新書 2005年5月25日刊

「白隠——禅画の世界」の画像 白隠禅師といえば、真ん丸の目をぎょろりと剥いた達磨図など、プリミティブな迫力に満ち、ときにユーモラスともいえる禅画が思い浮かぶ。本書は、造形面のみに依る解釈や印象批評が先行してきたこれら白隠の絵画について、禅学研究の立場から丹念に検証し、臨済禅中興の祖・白隠の宗教的メッセージを明らかにする。「白隠は芸術家ではない、宗教家である。」とは単純な事実のようだが、謎解きのように作品を読み解いていくに従い、その意味が実感として腑に落ちてくる。駿河国原宿に生まれ、長らく故郷の松陰寺に住した白隠禅師。その禅画の紹介は県立美術館として積年の課題である。その課題の大きさと奥深さ、そして面白さを改めて教えられた。
(当館学芸員 石上充代)

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