コレクション新収蔵品

2002年 静岡県立美術館 収蔵作品

西洋絵画 |  日本画・日本洋画・戦後美術

西洋絵画

ポール・シニャック 1863-1935

ポール・シニャック(1863-1935)は、ジョルジュ・スーラ(1859-1891)と並んで、新印象主義を代表する画家で、小さな色点をキャンヴァスに並置する点描技法で知られています。彼は21歳のとき、スーラの徹底した点描技法に啓発され、スーラから受け継いだ新印象主義の技法と理論を追求したのでした。お喋りで社交的だった彼は、内気で人付き合いのへたなスーラとは対照的でしたが、スーラの苦手とした画家や批評家たちとの交流を引きうけるなど、両者は互いに補い合う関係にありました。また、新印象主義の目的や理論をまとめた「ドラクロワから新印象主義まで」(1899年)は、シニャックの重要な著作として知られています。

1891年のスーラの死は、シニャックにとって大きな打撃でした。失意のシニャックは、友人の勧めで南仏に移り、制作のかたわら地中海をヨットで航海しました。サン=トロペは、そのときに知った小さな漁港で、彼は1913年頃までこの漁港を中心に活動しました。この絵に描かれた眺めも、サン=トロペ湾をその西側にあるグリモーの古城から見たものです。中世の遺構である古城と丘の斜面をいろどる黄色、ピンク、オレンジ色の暖色は、群青や青紫の寒色と呼応し、バランスのとれた構図に色彩の輝きと調和を与えています。

サン=トロペ、グリモーの古城の画像

《サン=トロペ、
グリモーの古城》

1899年
73.0×91.7cm
油彩、キャンバス

ジャック・カロ 1592-1635

ジャック・カロは17世紀に活躍した、フランス生まれの版画家である。本作品は題名にあるとおり、ボヘミアン(ジプシー)の旅暮らしを描いた作品。30年戦争の引き金となった、ボヘミアの反乱軍の姿を描いたものだという説もある。この連作は、4点の作品からなっており、それぞれ《出発》《先頭》《休息》《宴の準備》の場面を描いている。いずれの場面でもカロらしい風俗描写が遺憾なく発揮されている。殊に《宴の準備》では、食事の支度からカード遊び、出産、排便にいたるまで、様々な仕草が描きこまれている。

「ボへミアン」(全4点)
1622年頃
約12.5×23.7cm
紙、エッチング


《出発》

《先頭》

《休息》

《宴の準備》

アドリアーン・ファン・オスターデ 1610-1685

アドリアーン・ファン・オスターデは、弟のイサークと共に17世紀オランダで活動した。生涯の大部分をハールレムで過ごしたと思われる。彼の作品は、田舎の宿屋や農民の生活、靴や織物その他の職人風俗を描いたことで知られている。本作品の場合、人物は画面右奥に一人、壁の方を向いて描かれているのみである。ここでは納屋の情景そのものが主題となっているのである。これは当時の作品としてはやや特殊な仕方だと考えられ、やがて「風景」を成立させる視点が感じられ、興味深い。

納屋の画像

《納屋》
1647年
15.7×19.3cm
紙、エッチング

ジャック・デ・ホイエンII世 1565-1629

ホイエンII世は、16世紀末から17世紀初頭にかけて、ネーデルランドで活躍した版画家である。ネーデルランドは今日のオランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、いわゆるベネルクス3国の地域を指す。本作品は、世界を形作ると考えられていた、4つの元素を絵解きで表したもの。それぞれに関連する事物が描かれ、《土(地)》であれば大地の豊穣を示す様々な果実や狩の場面、《水》であれば河や船、《空気(風)》であれば雲や鳥、空気を食べると信じられたカメレオン、《火》には煮炊きや火打石、火トカゲやフイゴ等が描き込まれている。

「四大元素」(全4点)
1588年頃
約16.5×20.6cm
紙、エングレーヴィング


《土》

《水》

《火》

《空気》

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