アマリリス Amaryllis

2011年度 夏 No.102

実技室イベント報告(1)

「工作アトリエ ~親子で丸凧作りそして凧揚げ~」

 当館収蔵品《東海道五十三次 隷書版》(歌川広重)の「袋井宿」の上空に丸い凧が描かれているのをご存知の方も多いのではないでしょうか。今回は、袋井丸凧保存会(当時の丸凧を再現し普及に努めている)の皆様にご協力いただき、丸凧作りから凧揚げの指導まで、丁寧に手ほどきを受けました。
 袋井丸凧保存会の方は、丸凧の普及に努めていらっしゃるだけでなく、「もの作りの大切さや楽しさを子供達に伝えたい」という思いもあり、丸凧作りの設計図を参加者人数分作ってきてくれ、42箇所もある竹骨を固定する箇所をわかりやすく指示してくれました。何といっても「丸凧は縦:横=100:106の比率になっていて、正円ではない。凧を揚げた時に正円に見えるよう、揚げた時の微妙な反りを計算して作ってある。昔の人の知恵だ」というお話に、感銘を受けました。
 参加者の皆さんが思い思いの凧絵を描かれる中、当館スタッフとボランティアさんで「開館25周年」、「がんばれ日本」の文字を入れた二つの丸凧を製作しました。両方とも高く揚がりましたが、特に「がんばれ日本」の丸凧は、どの凧よりも長時間、上空に舞っていて園地でたまたま見ていた方々から歓声があがっていました。


高く上がれ、丸凧!


「ちょこっと体験 ~シルクスクリーン」

 「ちょこっと体験」は本年度から新たに教育普及事業に加えたプログラムです。4月は<シルクスクリーン>と<ドット若冲>、6月<銅版画>、9月<木版画>、1月<日本画>を計画しました。ちょこっと体験の定義づけは、①15分以内で作品ができること、②無料で体験ができること、③実技入門講座や創作週間などの実技室イベントに興味をもってもらうこと、の三つです。
 4月12日(火)から17日(日)まで、エントランスで開催した<シルクスクリーン>のちょこっと体験は、参加者が633名と大好評でした。エコバッグに、当館収蔵品の柄を刷る体験です。版は《樹花鳥獣図屏風》の部分や《考える人》のシルエットなど、10種類を用意。はがき大程度のサイズのシルク版は、刷るには扱いやすいですが、版準備は大変です。当館スタッフは、それでも「楽しかった」、「来てよかった」、「静岡県立美術館に来た記念になる」という来館者の方々の笑顔に支えられ、版の補修やうまく刷るための指導法研究に明け暮れ、あっという間にイベント期間が終了しました。
 そして、シルクスクリーンを体験された方の中から、5月の実技入門講座(シルクスクリーン)参加希望者が多数あったことと、「私はこの版で刷るわ。展示室で見てきた《三本の木》でしょ?これ」と『百花繚乱展』での観覧と合わせて当館収蔵品を気に入っていただけた方がいたことを成果として特記しておきます。
(当館学芸課主査 鈴木雅道)


シルクスクリーン

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