「インカ帝国と聞いて、何を連想しますか?」と、周囲の何人かに訊ねたところ、「太陽の王国」「黄金」「マヤ文明みたいなもの?」等々の答えが返ってきました。
これらの答えには、正しいものも、そうでないものもあります。
インカ帝国は、北は今日のコロンビアやエクアドル、そしてボリヴィアやペルーを挟んで、南はチリ、アルゼンチンにまで拡がっていた、南米最大の帝国でした。マヤ文明は、同じ南米ではあっても、メキシコ東南部のメソアメリカと言われる地域で栄えた文明であり、インカ帝国とは異なります。
さて、インカ帝国は15世紀半ばから16世紀前半に繁栄しましたが、ほんの一握りのスペイン人に侵略され、あっけないほど簡単に滅んでしまいました。では、この国はそんなに力の無い国だったのか?いえいえ、そんなことはありません。豊かな工芸品や風俗、精密で巨大な建造物、全土を覆う道路網などは、この帝国の高度な文化を示しています。
ところが不思議なことに、ここでは車輪も文字も、また鉄器も知られていなかったようなのです。これほど高度な帝国が、1世紀という短期間にどのようにして発展したのか。そして、何故あっさりと衰退してしまったのか。
本展覧会は、3つの視点から、このインカ帝国の様々な謎に迫ります。今日も残る遺跡や、そこから発掘された儀式用の道具や生活用の民具等の遺物を調べる考古学。民族の信仰や風習、さらには最新科学を用いたDNAに至るまでを調査する人類学。スペイン人が残した記録文書や絵画資料を読み解き、帝国の成り立ちや繁栄、そして最後を検証しようとする歴史学。これらの最新成果を基にして、インカ帝国の全貌を、多角的な視点から読み解こうするのが、この展覧会なのです。
総点数約160点の考古遺物は、その多くが日本初公開です。それらの中には、インカ帝国を特徴付けるミイラも含まれています。また、標高2,400メートルの断崖に作られた天空の都市・マチュピチュを、実写映像とヴァーチャル・リアリティ映像とを組み合わせて再現したスカイビューシアターは、現地でも見ることの出来ない特殊なものです。
アンデス文明の棹尾を飾るインカ帝国の不思議、この機会に是非、ご堪能下さい。
(当館上席学芸員 新田建史)
《眼球が残る20代女性のミイラ》
15~16世紀
レイメバンバ博物館
撮影:義井 豊
《犠牲埋葬の副葬品の人形》
16世紀初頭
トゥクメ遺跡付属博物館
撮影:義井 豊
ムンド・デ・アレグリア学校生徒たちによる民俗舞踊 |
11月27日(火)13:00~13:30 無料、申込不要 |
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清水銀行プレゼンツ特別講演会 |
12月9日(日)13:30から15:40(予定)(開場13:00)
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瀬木貴将コンサート |
12月16日(日)13:30~14:30
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