アマリリス Amaryllis

2008年度 春 No.90

唐招提寺金堂平成大修理記念
国宝 鑑真和上展
2008年7月12日(土)〜8月31日(日)

759年(天平宝字3年)、唐招提寺は、はるばる中国からやってきた高僧・鑑真和上によって創建されました。
准南や江南で僧俗の信望を一身に集めていた鑑真和上のもとに、日本からの留学僧である栄叡、普照が訪れたのは、和上55歳のときのこと。二人の懇願を受け、和上は正式な戒律と仏法を伝えるための渡日を決意されます。しかし、出国は唐の国禁を犯すことでもあり、当時としては高齢の和上にとって、それは命懸けの事業でした。風波のための遭難や計画密告による挫折など、5度に及ぶ失敗と12年の歳月を乗り越えてようやく日本にたどりつきますが、そのとき、和上はすでに目の光を失っていました。
日本において聖武上皇以下国を挙げての歓迎を受け、唐招提寺の建立をはじめとして日本の仏教および文化に有形無形の多大な足跡を残しました。和上その人の偉業もさりながら、多くの弟子や工人を伴っての来日によって、唐の円熟した芸術・文化が持ち込まれ、多方面にわたる影響を与えることとなったのです。
この展覧会では、鑑真和上を開基とする唐招提寺の寺宝を一堂に公開し、同寺の歴史的な意義や天平時代の仏教美術の至宝をご覧いただきます。
中でも、鑑真和上坐像はその核心となるものです。このお像は、弟子の僧・忍基が、講堂の梁が砕ける夢を見て師の遷化の近いことを知り、在りし日の和上のお姿をとどめようと制作したものとされます。その風貌とともに和上の精神をも表した造形は、他に類を見ない崇高さをたたえています。師の姿を、そのように無比のものとして表し得た弟子たちの尊崇の念も、また一方ならぬものであったことが察せられます。
1200年以上にわたり、唐招提寺の精神的象徴として大切に伝えられてきた鑑真和上坐像を中心に、国宝9件、重要文化財34件を含む約140点をご紹介する展覧会。時代を越えて人々の心を打つ鑑真和上の偉業と、その精神を伝える文物に、ここ静岡で触れるまたとない機会です。
(当館学芸員 森 充代)


金亀舎利塔(国宝)平安時代
撮影:金井杜道

鑑真和上坐像(国宝)奈良時代
撮影:金井杜道

Information

観覧料 一般 1,200円(1,000円)
高校生・大学生・70歳以上 600円(500円)
中学生以下 無料
※()内は前売または20名以上の団体料金。
「清水銀行創立80周年記念」連続講演会 会場:静岡県立大学 大講堂 / 定員:900名
聴講無料、申込不要
【第1回】 7月21日(祝・月) 13:30〜
「共結来縁」(ともに来縁を結ばん)
講師:松浦俊海師(律宗総本山 唐招提寺長老)
【第2回】 7月21日(祝・月) 14:30〜
「鑑真和上と唐招提寺の仏像」
講師:鷲塚泰光氏(展覧会総監修、前奈良国立博物館館長)
【第3回】 7月26日(土) 14:00〜
「講座 鑑真和上の教え—戒律について」
講師:石田太一師(律宗総本山 唐招提寺執事)
【第4回】 8月2日(土) 14:00〜
「仏像のひみつに近づく」
講師:山本勉氏(清泉女子大学教授)
【第5回】 8月16日(土) 14:00〜
「蓮のイコノロジー」
講師:宮治昭(静岡県立美術館館長、龍谷大学特任教授)

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