アマリリス Amaryllis

2008年度 秋 No.91

富士山静岡空港開港記念
「朝鮮王朝の絵画と日本」展
2009年 2月17日(火)〜3月29日(日)

来年の2月から始まる「朝鮮王朝の絵画と日本」展は、いままさに準備の真っ最中。原稿の締め切りを気にしながら熟睡できない日々が続きます。

さて、前号でも書かせていただいたこの展覧会、今回はその見所について簡単にご紹介いたしましょう。見所は大きく2つに分けることができます。

(1)知られざる朝鮮王朝の絵画
朝鮮王朝は、高麗ののちに朝鮮半島に成立した、朝鮮半島最後の王朝です。王朝の歴史はおよそ 500年にわたり、日本とは室町・桃山・江戸・明治の各時代に密接な関わりをもってきました。
にもかかわらず、朝鮮王朝の絵画と聞いて特定の作品を挙げられる人は多くないのが現状でしょう。中国の影響を受けつつ独自の様式を確立した前期の安堅らによる山水画、中期を代表する李巌の花鳥画、鄭■(■は、「善」+「攵」)・金弘道・金正喜ら後期の画家による新しい風景画や風俗画、さらには「民画」など、韓国からもおよそ30点の作品をお借りして、かつてない規模で朝鮮王朝の絵画の全貌をご紹介いたします。中国でもない、日本でもない朝鮮絵画ワールド。その魅力を存分にお楽しみください。

(2) 朝鮮絵画を学んだ日本の巨匠たち
朝鮮の絵画は日本の絵師たちにも大きな影響を与えました。室町時代における雪村や曽我派、雲谷 派の絵師をはじめ、近世の俵屋宗達、池大雅、伊藤若冲などの作品にもその影響—そのかたちは様々 ですが—をみることができます。同時に、それらの違いも感じ取っていただけるでしょう。
世に傑作といわれる作品、あるいは個人的に好きな作品、それらを個々の作品として鑑賞することも大きな喜びですが、より大きな歴史の枠組みでとらえることにより、必ずや新しい喜びに出会うことが出来るはずです。

総出品作品は国内外含めて300点以上。これほどの規模で朝鮮王朝の美術を通覧できる展覧会は、今後いつ行うことができるか分からない、まさに空前絶後といってよいでしょう。来年3月に予定されてい る富士山静岡空港の開港によってさらに近くなる韓国。日韓のさらなる交流の発展を象徴するこの機会をお見逃しなく。
(当館学芸員 福士雄也)

狩野栄信(伊川院) 《月夜葡萄図屏風》の作品画像
狩野栄信(伊川院) 《月夜葡萄図屏風》(当館蔵)

Information

観覧料 一般 900円(700円)
高校生・大学生・70歳以上 400円(300円)
中学生以下 無料
※()内は前売または20名以上の団体料金。

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