アマリリス Amaryllis

2009年度 春 No.93

本の窓
「ニコラ・プッサンとイエズス会図像の研究」 木村三郎著

中央公論美術出版社 2007年2月

アーティスト症候群の表紙画像 17世紀にローマで活躍したフランス人画家、ニコラ・プッサン。この人、日本でのキリスト教布教で有名な、聖フランシスコ・ザビエルの奇跡を描いてもいます。本書はこの絵に端を発した著者20年の研究をまとめたもの。パリに一時帰国したプッサンと周囲の不和、極東への関心、ザビエルを含むイエズス会の図像等について、綿密に論じています。遠く離れた西洋の文物を日本で研究するのは困難ですが、東西の交流という観点に立てば、大事な資料が身近にあるのです。研究資料に「虚心に向き合い、対峙」し続けるのは決して容易ではないですし、その成果も取っ付き易くありません。しかしこういう地道な研究こそ、後に続く人の土台になるのですね。「美術と真面目に向かい合う」には、こういう仕方もあるのです。お勧めします。
(当館主任学芸員 新田建史)

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