アマリリス Amaryllis

2009年度 春 No.93

静岡県立美術館は、17世紀以降の東西の風景表現を、収集方針の大きな柱の一つとしてきました。昨年度は当県ゆかりの画派である狩野派の屏風をはじめ、風景画の優品、現代の作家たちの作品を収蔵することが出来ました。これからも皆様の財産であるコレクションの間口と奥行きを、一層広げてまいります。ご期待下さい。

栗原忠二 セントポールの作品画像
《狩野探信守道《井出玉川・大堰川図屏風》右隻》
狩野探信守道 1785-1835(天明五-天保六)

《井手玉川・大堰川図屏風》
6曲1双 紙本着色 1825-35(文政八-天保六) 平成20年度新収蔵品


右隻に山吹の咲き誇る春の井手玉川、左隻に紅葉の燃える秋の大堰川を描く。いずれも、古来より和歌に詠まれてきた京都の景勝地に取材した名所絵である。本作は狩野探幽(1602-74)がやまと絵を取り入れて制作した同主題作品(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)の構図をほぼそのまま利用したものであるが、濃厚な色彩やふんだんに撒かれた金砂子など、原本により装飾性を加味しており、漢画臭が一切払拭された全くのやまと絵となっている。
狩野探信守道は探幽を祖とする鍛冶橋狩野家の第七代。やまと絵や風俗画を熱心に学習したことが知られるが、本作はその代表作といえるものである。また、探幽の《香山九老・竹林七賢図屏風》(当館蔵)裏面には守道の山水図が描かれており、こうした自家の祖に対する思慕の念が本作にもあらわれているといえよう。
(当館学芸員 福士雄也)

※新収蔵品展(5月15日(金)まで)に出品されます。

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