アマリリス Amaryllis

2009年度 夏 No.94

パウル・クレー 東洋への夢
2009年 7月14日(火)〜8月30日(日)

片足で踊る三人の裸の人物の画像
パウル・クレー
《片足で踊る三人の裸の人物》
パウル・クレー・センター蔵

リズミカルな線と色彩豊かな絵画で知られるパウル・クレー(1879−1940)は、20世紀を代表する芸術家です。スイスのベルンに生まれ、ドイツで美術を学んでから画家として成功しますが、ナチスの台頭を逃れて生まれ故郷で没しました。日本では、これまで何度もクレーの展覧会が開かれ、その生涯と作品が紹介されてきました。本展では、クレーと日本および東洋との関わりに焦点を当てることによって、新たなクレー像に迫ることをめざしています。

19世紀半ば以降のヨーロッパでは、万国博覧会の開催などによって、日本を含む東洋の美術が積極的に紹介され、ジャポニスム(日本趣味)という言葉が生まれるほどの熱狂的な時期がありました。クレーが残した日記や書簡には、これらに関する記述は多くはありません。しかし、日本や東洋の美術作品のイメージを掲載した雑誌や理論書などの出版物、美術館のコレクション、浮世絵を吸収したホイッスラーやゴッホらの作品などから、東洋美術を参照する機会がありました。また、妻リリーからプレゼントされた中国関係の書籍は、美術のみならず思想の面でもクレーに影響を与えました。さらに、1902年、イタリアで上演された川上貞奴一座の芝居を観劇したクレーは、その感想を日記に綴っています。

この展覧会は、浮世絵からの影響が推測される、激しい身ぶりや顔を描いた初期の鉛筆デッサン、東洋的要素を感じさせるカリカチュアやカリグラフィー、風景画に加え、クレー作品と関連する浮世絵、クレーの蔵書などによって構成されます。出品作品は、世界最大のクレー・コレクションを誇るスイスのクレー・センターのほか、スイスの個人蔵の作品や、国内美術館の所蔵品です。
日本では初紹介となる、クレーが夢見た東洋の世界をお楽しみください。
(当館主任学芸員 南 美幸)

木の表情1の画像
パウル・クレー
《木の表情1》
パウル・クレー・センター蔵 雨模様の小風景の画像
パウル・クレー
《雨模様の小風景》
パウル・クレー・センター蔵
リヴィア・クレー寄贈 無題(二重の目測)の画像
パウル・クレー
《無題(二重の目測)》
パウル・クレー・センター蔵

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