アマリリス Amaryllis

2009年度 夏 No.94

特集 狩野派の世界2009
9月10日(木)〜10月18日(日)


初期狩野派
《四季花鳥図屏風》(右隻)
当館蔵


狩野探幽
《一ノ谷合戦・二度之懸図屏風》
当館蔵

「狩野派」という言葉は、日本の古美術に関心がない方でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。「狩野」という姓が示すように、狩野派は血縁で繋がった狩野家を中心とした流派、端的に言えば専門の絵師集団のことです。室町から江戸まで、常に各時代の為政者に仕え、幕府の御用絵師としての地位を確保してきました。

その狩野派ですが、江戸時代の資料によれば、先祖は伊豆の出身であると伝えられています(1)。また、駿府、すなわち現在の静岡市は江戸時代を通じて幕府の直轄地(天領)であり、当地の主要な絵画制作は幕府の御用絵師である狩野派が担当していました。静岡県は狩野派と大変ゆかりの深い土地でもあるのです。

当館ではこのような事実に着目し、開館前から狩野派の作品を系統的に収集してきました。当館蔵の狩野派作品は現在42件(2)を数え、当館のコレクションのなかでも特色ある作品群を形成しています。

これら狩野派コレクションの一堂を展示し好評を得た1999年の「特集 狩野派の世界」以降、2003年には新発見作などを加えて再び特集展示を行いました。定期的な狩野派の特集展示を求めるお客様の声にお応えし、また当館の特色あるコレクションを広くアピールする意味で、今回当館では6年振りとなる狩野派の特集展示を開催いたします。

展示の中心となる当館のコレクションは、江戸時代以降の作品が比較的充実しており、とくに岡倉天心をして「画壇の家康」とまで言わしめた狩野探幽(1602−74)の作品は《七賢九老図屏風》や《一ノ谷合戦・二度之懸図屏風》など優品が揃って展示されます。

一方で、室町・桃山期の作品が圧倒的に不足している点は、狩野派の展開を辿るうえでは大きな弱点です。そのような欠を補うべく、新発見・初公開となる作品を含む個人所蔵の作品も出品する予定で、目下準備を進めているところです。良く知られた名品だけでなく、あっと驚くような作品に出会うことができるかもしれません。乞うご期待!
(当館学芸員 福士雄也)

(1)絵師としての狩野家の初代、正信は上総の出身であるとの説もありますが、いずれにしても広い意味では狩野家の出自が伊豆であることに変わりありません。
(2)平成21年4月現在

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