アマリリス Amaryllis

2010年度 春 No.97

トリノ・エジプト展 —イタリアが愛した美の遺産—
2010年6月12日(土)〜8月22日(日)

トリノはイタリアの北方、フランスとも国境を接するピエモンテ州の州都です。フィアットをはじめとする工業で有名ですし、2006年に開催された冬季オリンピックは、まだ記憶に新しいかもしれません。
さて、そのトリノには、世界に誇るエジプト博物館があるのをご存じでしょうか?
17世紀前半にトリノを治めていたサヴォイア王家のコレクションに端を発し、ナポレオンのエジプト遠征やイタリア王国の独立、第2次世界大戦といった、イタリアを大きく揺さぶる荒波に揉まれながらも、その歴史は今日まで脈々と続けられてきたのです。 本展でご紹介するのは、このトリノ・エジプト博物館の所蔵品です。本家エジプトはカイロにあるエジプト博物館に次ぐと言われるその素晴らしいコレクションから、ミイラや彩色木棺を含む、約120点を厳選してお届けします。
中でも、《アメン神とツタンカーメン王の像》は、見応えのある作品です。黄金のマスクで有名なツタンカーメン王が、アメン神という神と共に表されたこの彫像は、高さ2メートル以上もある見応えのあるものです。この作品が博物館の外に出品されるのは、日本が初めてのことです。
また《イビの石製人型棺の蓋》は、イビという役人を葬るのに使われた棺の蓋なのですが、金属のような堅い光沢をもつベケン石という石材で作られ、その重厚さ、精巧さには、圧倒されずにはいられません。「彫像ギャラリー」や「祈りの軌跡」「死者の旅立ち」等、全部で5つの章からなる本展には、他にも日常生活に用いられた品々から外科手術用具、小型の彫像や宝飾品も展示されます。それらはいずれも、数千年前にすでに人類が到達していた、高度な文化を私たちに伝えてくれます。
かつて世界で初めて神聖文字ヒエログリフを解読した学者、シャンポリオンをして「[古代エジプトの]メンフィスとテーベへの道はトリノを通過している」と言わしめたその作品、この機会に是非ご観覧下さい。
(当館主任学芸員 新田建史)

《アメン神とツタンカーメン王の像》の画像
《アメン神とツタンカーメン王の像》
新王国時代、前1333−前1292年頃 《イビの石製人型棺の蓋》の画像
《イビの石製人型棺の蓋》
末期王朝時代、前664−前610年頃
トリノ・エジプト博物館蔵 西川よしえ撮影

Information

観覧料 一般 1,200円(1,000円)
高校生・大学生・70歳以上 600円(500円)
中学生以下 無料
※()内は前売または20名以上の団体料金。

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