来年、静岡県立美術館は開館25周年を迎えます。東西の風景画を収集方針の核としたコレクションは、約2千7百点にのぼります。本展は、その中から、西洋画・日本画・日本洋画・現代美術の全てのジャンルにまたがり、選りすぐりの作品を一挙に展示します。キーワードは「あなた」と「愛」。「あなた」とは、作家でもあり、また皆さん鑑賞者でもあります。作家が愛した風景との出会いが、皆さんの愛する作品となりますように。そんな願いを込めた展覧会です。
　まず西洋画では、17世紀から20世紀前半まで、芸術家が「自然に寄せた愛」や、さまざまな革新的実験を試行錯誤しつつ「芸術への愛」を消化した作品を展示します。日本画では、すばらしい景色に恵まれた静岡県の代表的な景観である富士山や東海道などの身近な実景と、中国などからの影響による理想の風景を描いた山水画を同時に展示します。日本近代の洋画では、富士山のほか、日本の美しい自然である雪、山、川、海や湖などを対象に描いた作品を展示します。そして最後に現代美術は、当館でお預かりしている現代の写真コレクションの中から、現役で活躍する北井一夫ならびに森山大道に焦点を当て、両写真家が鋭く切り取る現代の風景を展示します。　なお、当館は今年、18世紀フランスを代表する画家フランソワ・ブーシェの油彩画2点を新たに購入しました。本展は、これらの作品をお披露目するとともに、これを記念し、ブーシェと他の18世紀フランスのロココの作家たちによる特別展示室を設けます。
　フランス・ロココの優雅な香りをご堪能いただくとともに、あなたの心を揺さぶる、「愛する風景」を是非見つけてください。
（当館上席学芸員　南　美幸）