《富士三保松原図屏風》
16世紀中頃(室町時代)
紙本金地着色
六曲一双屏風
各137.5×329.4
富士山と三保松原を組み合わせて描く絵画は、伝統的に描き継がれてきたが、本作品は屏風作品としては現存最古の作例。右隻に白一色の富士、左隻から右隻にかけ三保松原を大きく配し、左隻中央奥に清見寺、左端に清水湊・木橋のかかる巴川を描く。山間の桜や、巴川の岸辺に見られる芽吹きの柳の描写から季節は春と思われ、のどかな雰囲気が画面にただよう。彩色上の特徴、金箔・銀砂子の加飾法、それらを含めた素朴な画風から見て、室町時代末期(16世紀中頃)の作で、筆者は狩野や土佐といった正系に属さない絵師と考えられている。富士山図の系譜の中で、名所風俗図屏風の原初的な形をしめす貴重な作品である。