美術館ニュース アマリリス より
■表紙解説
富士山と三保松原を組み合わせて描く伝統的図様ながら、現実の眺望に近い横長の画面と、樹木や帆船など細部まで丹念に描きこんだ描写に新たな画趣をみせている。画中に、久能山上(現清水市・鉄舟寺観音堂のある場所)から描いたことが記されており、実際の景観観察がもとになったことがわかる。江戸時代後期には、実際の風景を現実に即して描く実景図作品が盛んに制作されるが、本図もその一例。絵師は京都で繊細で調和のとれた様式を確立し一派をなした原在中。在中73歳、晩年期の異色作であるが、新たな富士山図創造への意欲がうかがえる名品である。
(当館主任学芸員 飯田 真)
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