今春、当館の開館15周年を記念して、ポール・シニャック作《サン=トロペ、グリモーの古城》が購入された。シニャックは、ジョルジュ・スーラ(1859〜1891)と並ぶ新印象主義の画家で、キャンヴァスに無数の色点を並置する点描技法を最大の特色としていた。 この絵に描かれているのは、南仏のサン=トロペ湾をその西側にあるグリモーの古城から見た眺めである。スーラの夭折に大きな打撃をうけたシニャックは、 友人の勧めで南仏に移り、制作のかたわら地中海をヨットで航海した。サン=トロペは、そのときに知った小さな漁港だった。中世の遺構である古城と丘の斜面をいろどる黄色、ピンク、オレンジ色の暖色は、群青や青紫の寒色と呼応し、安定した構図に色彩の輝きと調和を与えている。
(当館学芸課長 小針由紀隆)
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