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和田英作 1874-1959(明治7-昭和34)年
《富士》
1918 (大正7 )年
キャンヴァス、油彩 60.6 ×80.3cm
平成13 年度新収蔵品

 

 早暁の富士、東の空が仄(ほの)かに明らみ、それを受けて山頂は紅色に染まり、次第に裾にも鮮やかな色彩が広がる。厳寒の空は澄明さを増し、微妙な階調を呈している。画面全体が色調の変化によって捉えられ、冬枯れの薄暗い大地と清澄な富士の雄姿は対照をなす。斜面にみられる凹凸をも巧みに表わし、山頂と稜線とのバランスもよく、富士は一層壮麗にみえる。山梨県富士吉田市での写生を試み、冬の早朝にみられる一瞬の自然の光景を見事に捉え、その新鮮な感覚を失うことなく、画としての完成を果たしている。匠気を持たず、富士を描き続けた作者が到達した画境を窺わせる作である。

(当館学芸員 泰井 良)




Index
■移動子どもワークショップ報告
■平成13年度新収蔵作品をご紹介します
■遙かなるイスタンブール「大トルコ展−文明と美術−」
「大本山相國寺・金閣・銀閣秘宝展」
■研究ノート 『和田英作「富士」について』 泰井 良
■「館長随想」 吉岡健二郎

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