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左から見ると、鳥かごの中に白いピンポン玉が入っているように見えるが、右から見ると、青いピンポン玉が入っているように見える。種を明かすと、鳥かごの中央が両面鏡で仕切られており、その両脇に、同数の青と白のピンポン玉が左右対称になるように置かれているにすぎない。鑑賞者は鏡に映った鏡像を、実像であるように錯覚するのである。その体験を通して、虚実の関係性や視覚についての考えに誘われる。《Half and Half》は、当時、好評を博し、多くのヴァリエーションが作られた。
《Half and Half》 1969(昭和44)年 19.3×20.0×20.1cm 鳥かご、ピンポン球、鏡 |
《Half and Half》 1969(昭和44)年 19.4×20.0×20.2cm 鳥かご、木、鏡 |
《〈内乱のきざし〉の相貌をおびた非在のタブロー》 1967(昭和42)年 130.6×130.6cm 木、キャンヴァス、油彩 名画とされる絵画の図像イメージを自作の中に引用することによって、改めて「見ること」を検証しようとする非在のタブローシリーズの代表作。よく知られたダリ《内乱のきざし》をもとにしている。1967年、第11回シェル美術館賞展に出品され、2等賞を獲得した。 |
《非在のタブロー−空》 1967(昭和42)年 (1970年頃加筆) 130.7×162.2cm 木、キャンヴァス、油彩 非在のタブローシリーズのひとつである。このシリーズの他の作品が、名画をもとにしているのに対して、この作品は、プラモデルと青空をモチーフとした異色作である。第11回シェル美術館賞展(1967)に出品され、2等賞を受賞した《裏返しの相貌をおびた非在のタブロー》を、作者自ら約3年後に加筆したもの。描き込みすぎてうるさかったのを整理し、プラモデルの飛行機も当時の最新のものに直したとのことである。 |
人間の眼の錯覚を利用して、二次元のイメージを三次元の立体に見せかけた作品。表面に取り付けられた梱包用の紐によって、立体感はいっそう際出っている。丹羽は1968年から69年にかけて同様の箱をテーマにしたヴァリエーションを数点発表しているが、多くは白一色であるのに対して、本作は色つきのもの。
《NO HOOKS》
1968(昭和43)年
138.0×123.0cm
合板、ラッカー、綿テープ
《遠近のものさし》 1967 (昭和42)年 縦35.0×横78.5×厚さ1.0cm×4枚 木、塗料 平面上に虚構の空間を作りだす絵画方法である線遠近法を、ものさしに置き換えて、現実の空間に出現させたものである。ただし、ものさしに書き込まれた目盛りや数字は実体に基づくものではなく、イメージに過ぎない。前田は、1967年から「遠近のものさし」シリーズを多数制作したが、本作はその最初期の作品と考えられる。 |
《遠近のものさし》 1967 (昭和42)年 伸ばした状態で65.8×499.7cm 木、塗料 「遠近のものさし」シリーズの一点。当館が平成17年に購入した。「トリックス&ヴィジョン」展(1968)出品作(プラスチック製)とほぼ同形、同サイズの作品だが、本作は木製で、おそらくそのプロトタイプと思われるものと思われる。 |
《遠近のものさし》 1967 (昭和42)年 91.9×178.5cm 木、塗料 「遠近のものさし」シリーズのなかでも、もっとも遠近法的デフォルメが極端な作品。陰影をほどこし、ものさしを立体的に見せるトリッキーな視覚要素も取り入れている。「幻触 虚在と実在を追う冒険者たち」展(1967年 静岡県民会館)に出品された。 |
《遠近のものさし》 1967(昭和42)年 90×166.0cm 木、塗料 「ものさし」と命題されているが、目盛はうすく描かれており、むしろ形体と色の造形的側面が強く出ている作品。「ものさしシリーズ」と《作品(赤)》などの連作との中間的な作品と考えられる。 |
《作品(赤)》 1967 (昭和42)年 99.5×167.0cm 木、塗料 |
作品(黄) 1967 (昭和42)年 160×91.2cm 木、塗料 |
《作品(青)》 1967 (昭和42)年 91.0×160.5cm 木、塗料 平板な板に陰影をつけて立体的に見せたトリッキーな作品。第11回シェル美術館賞展(1967)に出品された3点であるか、《作品(黄)》は落選し、《作品(青)》と《作品(赤)》は入選のうえ佳作を受賞した。 |
バサッ 1969(昭和44)年 157.3×45.7×9.5 cm×2個 木、塗料 マンガの擬音やスクリーントーンの網目、効果線などを用いて、文字と絵、意味するものと意味されるものの異同をテーマとしたコンセプチャルな作。前田には、マンガの吹き出しを造形化した作品もあるが、それと同じ方向性にある作品である。アメリカのポップアートはもちろん、グループ幻触のメンバーが師事した石子順造がマンガ評論を行っていたことも考え合わせると、当時における美術とサブカルチャーの接近を示す興味深い作例でもある。 |
《剥された言葉》 1971(昭和46)年 左 74.5×92.0×8.2cm 右 73.3×91.1×4.7cm 黒板、塗料、チョーク、黒板消し 文字と絵、意味するものと意味されるものの異同をテーマとした作品の一つ。高松次郎らのコンセプチャルな動向と軌を一にする作例。「六時間を過ぎたものは消します」は、以前、よく駅に設置されていた伝言板などを着想源としている。作者存命中の幻触回顧展(2005年)に2点ひと組として出品されたが、当初は左右別個の作品であった可能性もある。 |