日本画 | 版画・ミクストメディア | 油彩 | 彫刻 |
《蘭亭曲水図屏風》
17世紀(江戸前期)
紙本墨画淡彩
六曲一双屏風
各153.6×357.6cm
守景作としては他に類例のない蘭亭の会を主題としたもの。蘭亭の会は中国晋の時代、永和9年(353)3月に名士42人が蘭亭に会して禊し、曲水に杯を流して詩を詠んだという文雅の集いで、日本でも数多くの絵画作例がある伝統的主題である。生き生きとした人物の表現が大変魅力的な作品で、中にはすっかり酔っ払った人も見えるなど守景ならではの味付けがされている。曲水が左から右へと、つまり通常とは逆の向きに流れている点も注目される。探幽門下四天王の一人に数えられながら、狩野派破門説もある守景だが、広く取られた余白には師である狩野探幽(1602ー74)の画風を継承していることが確認できよう。当館所蔵の守景作品としては第一号となる作品。
《武蔵野図屏風》
17世紀(江戸前期)
紙本金地着色
六曲一双屏風
(右隻)155.6×356.8 (左隻)155.6×354.8cm
金地を画面上部に配し、下部に薄と萩・菊・桔梗などの秋草を描き、右隻の秋草の中に満月を、左隻の金雲の中に富士山を描く。屏風の大画面を生かし、秋の野原が茫々と続く壮大な景観が表現される。
「武蔵野は月の入るべき山もなし草より出でて草にこそ入れ」という俗謡的和歌に触発されたものとされる「武蔵野図屏風」は、江戸時代に隆盛し、多くの類作を生んだ。本作は、その中でもとりわけ装飾性の高い図様であるが、類型的に展開した「武蔵野図屏風」の中で、初発的な様相を見ることができる貴重な作例である。
《四季耕作図屏風》
19世紀(江戸後期)
紙本金地着色
六曲一双屏風
各163.5×357.4cm
移ろう季節の中に折々の農耕風景を描いた作品で、この主題も狩野派を中心に多くの絵画作例が知られる。それぞれの作業風景は、基本的には中国からもたらされた版本をもとに描かれたと考えられるが、中には子供たちが遊ぶ様子など農作業とは直接関係のないモチーフも多く描かれているほか、広々とした風景表現にはどこかの実景を参考にした可能性も考えられる。永岳は彦根藩の御用も務めているので、琵琶湖周辺の景観がヒントになったのかもしれない。永岳独特の群青を中心とした鮮やかな色彩と、金地の画面が華やかな雰囲気を作り出しており、数ある永岳作品の中でも指折りの傑作と言える。因みに、現在の京都御所には御常御殿をはじめとして永岳の障壁画が多く残されている。