コレクション新収蔵品

2010年 静岡県立美術館 収蔵作品

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油彩

中村宏 1932(昭和7)-

静岡県浜松市出身。日本の戦後美術を牽引してきた代表的な作家のひとり。1953年「ニッポン」展、1954年「第7回日本アンデパンダン展」などに出品。砂川などの基地反対闘争に参加し、ルポルタージュ絵画の代表作家となる。個展、グループ展多数。2007年、東京都現代美術館にて回顧展「中村宏・図画事件1953-2007」を開催。著作、装丁、挿画の仕事も多い。

車窓篇 TYPE 4の画像
《車窓篇 TYPE 4》
1977-1990(昭和52-平成2)
キャンヴァス、油彩
130×162cm
中村宏は、1950年代にルポルタージュ絵画の旗手として登場したが、1970年代からは「車窓篇」のシリーズを始める。ここでは飛行機、車、列車などの窓と、そこから見た様々な景色が描かれ、窓と絵画の関係から絵画の構造が検証される。《車窓篇 TYPE4》は、発表当初は窓外に風景が描かれていたが、後年、立ち入り禁止標示が加筆され、見る、見えないの理念的な操作が付加された。
早来迎機・1の画像
《早来迎機・1》
1988(昭和63)
キャンヴァス、アクリル
112×162cm
1980年代後半から始まった「タブロー機械」シリーズを展開したもの。「車窓篇」シリーズにおける窓と絵画の関係の考察を引き継ぎ、そこにダイナミックに運動する機械のメタファーを重ねる。機関車の動輪やプロペラを連想させる円環の動きは、観者の視線の動きを意識させる役割を担っている。なお、早来迎とは、阿弥陀如来が往生者を導くために、急速にこの世にあらわれることを言う。
井手玉川・大堰川図屏風の画像
《鉄道ダイヤグラムE》
2000(平成12)
キャンヴァス、アクリル
116.7×241.0cm
鉄道は、中村が一貫してよく取り上げるモチーフである。それはあるときには社会批判的なアイロニーの道具として、またあるときには「タブロー機械」シリーズのように、絵画の構造を検証するものとして用いられる。セーラー服の少女と組み合わされ、中村作品のシンボルともなっている。本作では、その運行表を図式化したダイアグラムをもとに、きわめて理知的な絵画検証が試みられている。

正木隆 1971-2004(昭和46-平成16)

兵庫県尼崎市生まれ。武蔵野美術大学研究科修了。2001年、セゾンアートプログラム・アートイングに選出され、気鋭の新進作家として期待される。個展を中心に活躍したが、恋人の後をおって自ら死を選んだ。没後、「愉しき家」展(愛知県美術館)、「カオスモス’07 さびしさと向きあって」展(佐倉市立美術館)などで注目され、国立や県立の美術館に作品が収蔵された。

狭山9月の画像
《狭山9月》
1999(平成11)
綿布、油彩
180×260cm
背後の色は何層にも塗り重ねられて、かすかに青が感知できる微妙な色彩である。そこに社会から疎外されたようなモチーフがぽつんと描かれる。正木はこのような絵画を一貫して制作した。本作は、初個展の出品作。アトリエのあった埼玉県狭山市の日常風景をもとにしている。幼年者をとりまく凄惨な社会問題は、20世紀末から21世紀初頭に顕在化し、この時代のメンタリティを想起させる。
綿布、油彩の画像
《造形01-14》
2001(平成13)
綿布、油彩
163.5×227.5cm
晴れやかで開放的であるはずの空は、団地を押しつぶすかのように重い。フリーハンドで描かれた団地は、人の手の跡を印象づけるが、そこには人が住む気配は感じられない。
団地は、正木がしばしば取り上げたモチーフ。多くの人が暮らしながらも人間関係が希薄である集合団地は、作家が生まれ育った昭和時代の象徴でもある。

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