日本画 | 版画・ミクスト・メディア | 油彩 | 彫刻 |
1932年大阪市生。長谷川潔の銅版画に感銘を受けて、独学で版画技法を習得した。特にアクアチントに優れ、その技法を主体に制作する希少な銅版画家となる。ドイツを中心にヨーロッパ各地で個展を開催。町田市立国際版画美術館、神奈川県立近代美術館などにまとまったコレクションが収蔵されている。
今回、生涯に約400点制作したうちから、作家自選の版画作品100点と、版画集4冊を寄贈いただいた。アクアチント独特の柔らかな諧調を生かした、静謐で詩情豊かな作風。楽器など音楽に関わるモチーフが多く登場し、題名にも音楽用語がよく用いられている。版画と音楽のアナロジーが意識して制作され、版画の造形要素と、音楽のメロディー、ハーモニー、リズムなどとの連想は、観る者に詩的な瞑想性を喚起させる。
静岡県浜松市出身。東京藝術大学美術学部で、駒井哲郎ゼミに入り銅版画を学ぶ。渡米し猪熊弦一郎、イサムノグチらの知遇を得る。詩人岡田隆彦や吉増剛造らと交友し、詩画集などを共作。イスラエルなど国内外で個展、グループ展を開催。一貫して身体をテーマに、自然、文明、人間の関わりを模索しつづけている。ミクストメディアによる平面作品やパブリックアートも手掛ける。
《水邊の庭I 》
1998〜2003年(平成10〜15年)
エッチング、メゾチント、アクアチント、ルーレット、手彩色、ベランアルシュ紙に雁皮刷り
60.0×105.0cm
《水邊の庭I》のほか、《水邊の庭II〜X》までシリーズ10点を収蔵。 詩人、吉増剛造は、柳澤紀子の出身地で浜名湖畔にある古い地名、古人見に想を得て、詩「水邊の庭」を詠んだ。柳澤はその詩に応えて、版画によるシリーズを制作し、この連作が生まれた。柳澤は故郷から世界へと旅を続け、水と人との関わりを取材した。各地の水は、人が身体に宿す水と感応し、文明と人との原初的な記憶を想起させる作品へと結実した。
柳澤は画業の初め、油絵の具が体質に合わなかったため、主に版画制作を行ってきたが、版画技法の練達とともに、絵画作品としての表現を重視していた。その姿勢は1999年からのミクストメディア作品によって開花する。試し刷りの版画、雁皮紙の断片、色鉛筆で塗り込められた色面など、様々な素材、技法が多声的な響きを奏でる。それは身体が多様な現象の場であることを観者に思わせる。
《水邊の庭I '01》
2001(平成13)
ミクストメディア (トレッシングペーパー、ワトソン紙、鉛筆、日本画顔料、版画、アクリルカラー、木炭、羽毛、針金、和紙)
210.0×210.0cm