コレクション新収蔵品

2015年 静岡県立美術館 新収蔵作品

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油彩

伊藤隆史 1933-1997(昭和8-平成9)

1933年、静岡県磐田郡福田町生まれ。1958年に清水を拠点に発足した、グループ「白」の中心メンバーの一人として活動する。石子順造と親交が厚く、機関誌の石子の批評文から、石子が、当時の伊藤を高く評価し、期待を寄せていたことがわかる。1959年〜60年にかけて伊藤は「現代人」と題する絵画を連続して描いている。二本足のような形が確認できるほかは、得体の知れない化け物のようなイメージでとらえ、同時代を生きる人間の存在を、形の定めづらい存在として表現した。合板の支持体の上に、凹凸のあるニュアンスに富んだマチエールで絵の具が塗り重ねられている。当時、日本で、アンフォルメル旋風が巻き起こる中にあって、伊藤の作品もその影響を免れることなく、ドリッピング風の表現方法も見られる。60年に描かれた《現代人》は、前年に描かれた作品と比較して、抽象表現主義的な傾向が少し整理され、形態がより明確に描かれている。この年、石子と、後の「幻触」の中心メンバーとなる鈴木慶則との3人で、評画誌『フェニックス』1号を刊行。メディアに流布するイメージを劇画風に描いた絵画と、文章を載せた冊子状の印刷物を、3人の共同制作作品として、知り合いやマスコミ宛に郵送した。61年に描かれた《生き物》は、前年までの《現代人》シリーズからは一変して、板に、麻袋のような布や板が貼り付けられ、その上に、絵具を塗られ、四肢をもつ化け物のようなイメージが創り出されている。厚みのある、たわんだ布の効果により、独自の質感を生んでいる。

生き物の画像
《生き物》
1958(昭和33)
合板、油彩 72.0×92.0cm
現代人Aの画像
《現代人A》
1959(昭和34)
合板、油彩 140.0×91.0cm
現代人の画像
《現代人》
1959(昭和34)
合板、油彩 152.0×91.0cm
現代人の画像
《現代人》
1960(昭和35)
合板、油彩 152.0×91.0cm
生き物の画像
《生き物》
1961(昭和36)
合板、油彩 145.0×68.0cm
 

長岡宏 1935(昭和10)-

幾何学的抽象やアンフォルメル風の人体を描くことから出発した長岡は、フランスへの留学から帰国後、目まぐるしく変化する美術の潮流の中で、1960年代末から70年代にかけて国際的にひろがった、ハイパーリアリズムに大きな影響を受ける。《MITSUI BUILDING》 はハイパーリアリズム風の作品を初めて発表した1975年に制作され、第1回東京展に出品された。東京新宿の三井ビルディングを取材し、格子で分割されたビルのガラス面に、透明な青い空や雲、対面するビルが映りこむ様を、感情を排して描き出し、都会的で無機質な高層ビル街の風景を浮かび上がらせている。《Past-Present-Future(A)》は、1975年の第5回個展出品作品。東名高速道路を取材し、写真に写ったイメージを拡大し、それを大画面のキャンヴァスに描きこむ方法で制作されている。
ワイパーやフロントガラスなど現在を示す環境、前方にみえる高速道路の風景、上方のバックミラーに映る、背後の風景が重なりあい、その錯視効果に戸惑う。物体と影、物体と鏡のイリュージョンが交錯した、風景を浮かび上がらせている。鏡に映るイリュージョンを描く手法は、80年代からのシンメトリーシリーズへと展開していく。

MITSUI BUILDINGの画像
《MITSUI BUILDING》
1975(昭和50)
キャンヴァス、アクリル 227.3×181.8cm
現代人Aの画像
《Past-Present-Future(A)》
1975(昭和50)
キャンヴァス、アクリル 227.3×181.8cm

加藤泉 1969(昭和44)-

1969年島根県生まれ。加藤泉は、日本の現代を代表する美術家の1人。初期より、絵画、立体の一貫して人のかたちを表現している。頭が大きく、ずん胴で、お腹が出ており、手足は胴体に比べて小さい。その形は、まるで胎児あるいは幼児を思わせる。輪郭線が強調され、目や口などの顔の造作、体のボリュームは、絵の具のタッチや平滑な色の塗りで表わされ単純化されている。背景は色面で構成されることが多いが、ここでは風景らしきものが描かれている。本作は、作家の村上隆がキュレーションをした「リトルボーイ」展(ニューヨーク、ジャパンソサエティー)に出展した年に描かれた。表情が読み取れず、前を向いてひとり暗闇に立つ人。加藤は、特定の人や場所、物語が描かれるのではなく、象徴化された人を描くことで、今の時代の人間存在そのものを浮き彫りにしている。

無題の画像

《無題》
2005(平成17)
キャンヴァス、油彩 91.0×60.3cm

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