風景の交響楽

個性おどる作品たち

西洋

色とかたちの自由な戯れ。 ファン・グリス 《果物皿と新聞》

脚付きの果物皿が幾何学的に簡略化されて画面中央に白く光っている。テーブルの木目も新聞の文字も自由に変形されて画面をかたちづくる。ピカソやブラックも同様の画風を追求したが、色彩の豊かさはグリス独特のものである。

異空間 パウル・クレー 《ホールC.エントランスR2》

積み木を積み上げたような不思議な空間。西欧の建築構造を幾何学形だけで表現した作品である。正面には3つの入り口、そして内部へ向かう奥行きも表現されている。それを可能にしたのは、色彩の選択とその巧みな配列である。

激しくうねり、輝き、溶ける。エコール・ド・パリの熱情。 ハイム・スーチン 《カーニュ風景》

激しく渦巻く建物や樹木の表現、そして何よりも輝く黄色が観る者に強烈な衝撃を与える。陽光を求めて赴いた南仏のセレそしてカーニュでのスーチンは、都会での精神的抑圧から解放され、本作のように熱情ほとばしる作品群を残した。

カタロニアの土着性と最新様式との結合。 ジョアン・ミロ 《シウラナの教会》

リズミカルで力強い輪郭線と、強烈な色彩が目をひく。本作については、フォーヴィスムやキュビスムなど同時代の潮流に加え、カタロニアのロマネスク壁画からの影響も指摘される。なお、シウラナは、バルセロナとヴァレンシアの中間に位置する山地。

積み重ねられた母国の記憶 アンゼルム・キーファー 《極光》

極北の大気中にあらわれた極光(オーロラ)と暗鬱に波打つ海面を背に、暗礁に乗り上げてしまった一隻の軍艦。未知なる世界への憧憬と人知及ばぬ運命による挫折という、ドイツ・ロマン派の世界に通じるテーマを、故国の戦争の記憶と重ね合わせる。縦長の画面に、塩酸で処理した鉛や写真の断片が大胆にコラージュされている。

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静岡県立美術館 学芸課
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