館長あいさつ

館長あいさつ

 当館は有度山うどやまと呼ばれる丘陵の中腹にあり、桜、欅、金木犀などの豊かな樹々に囲まれています。今年の春は桜の開花が早かったですね。花が散ったあと、日に日に緑が鮮やかさを増しています。

 美術館をあとにして坂道を下ってゆくと、目の前に低い山の連なりが見え、運がよければ、富士山を拝むことができます。運がよければと書いたのは、お天気次第で、富士はその姿をすぐに隠すからです。穏やかな風景を眺めながら、今見て来たばかりの展覧会を振り返るのも、当館を訪れる楽しみのひとつではないでしょうか。

 町から少し離れた場所にある美術館には一長一短があります。足の便を考えるなら、同じ静岡市内の静岡市美術館の方がはるかに訪れやすい。なにしろ駅前にありますから、地下街を抜ければ雨に濡れることもありません。かつてブリヂストン美術館の創設者石橋正二郎は、これからは仕事帰りに気楽に立ち寄れる美術館でなければならないと考え(戦後間もなくの話です)、東京駅前に場所を選んだのですが、その時に念頭にあった旧来の美術館とは上野の山の東京国立博物館でした。

 しかし、山の上の美術館も捨て難いことは先に述べたとおり。美術館を訪れることは、さまざまな時代のさまざまな作り手たちが作り出した別世界に足を踏み入れることだと考えるならば、町の喧騒から離れることにも一理あり、ゆえに一利あります。日々の暮らしを少しだけ離れて、美術館への坂道を上ってみませんか。

 現在、当館は改修工事のため本館を閉めていますが、「ロダン館やってます」というちょっとふざけたポスターを掲示しているとおり、ロダン館は開いています。そこでは、32点のロダン作品がみなさまをお待ちしております。

 また、この間に、下田にある上原美術館で「美を旅する」展(4月14日-5月20日)を開催します。これは当館のコレクションと上原美術館のコレクションをいっしょに展示する展覧会です。同館は1983年開館の上原仏教美術館と2000年開館の上原近代美術館が、昨年、ひとつになって生まれ変わりました。 そこに、さらに当館のコレクションが参加する。これによって、ロダンの彫刻と平安時代の興福寺千体観音が並んで立つ、という本来ならばありえないことが実現します。

 それが何を生み出すのかと考えるとわくわくします。異なる土地、異なる時代に、異なるひとびとの手で生み出されたものが一堂に会すること、これもまた美術館の醍醐味です。下田にもぜひ足を運んでください。

 当館の改修工事は6月末に終わり、7月14日に「安野光雅のふしぎな絵本展」開幕で全館オープンの予定です。

2018年春

館長 木下直之

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