作者は1973(昭和48) 年、静岡県焼津市生まれ。新進気鋭の画家として注目されるが、踏切事故により31歳の若さで死去した。2006(平成18)年、NHK新日曜美術館の本編で取り上げられて大反響を呼び、没後、一躍脚光を浴びている。一貫して自画像と思われる若者をもとに、現代社会における生きることの辛さ、悲しみを描き続けた。本作は石田の代表作。昼間、廃墟のような遊園地の、もう動かない遊具に若いサラリーマンが合体している。疲れ切って、ひと時の安楽を求めようとするが、飛びたくても、飛んで行けない。その姿は、社会の歯車として消耗する市井の者の悲哀を感じさせる。昨年度、本作を含む21点が、ご遺族から当館に一括して寄贈された。
(当館主任学芸員 堀切正人)
※4月1日(火)〜27日(日)、「新収蔵品展」に出品されます。
石田徹也《飛べなくなった人》
1996(平成8)年
103.0×145.6cm 板、アクリル
当館蔵(平成19年度寄贈)