静岡の調べ
グループ幻触
チャーミングでありながら心憎い作品。 飯田昭二 《Half and Half》
鏡の錯視効果を巧みに生かした作品。鳥かごの真ん中に仕組まれた両面鏡の板によって、実際には片方ずつ色の異なるパンプスが、まるで同じ色の一対が置いてあるかのように見える。かたや実物を、かたや鏡に映った像を同時に見て、見る者だれもが、対等の関係で目に映る実像と虚像の関係性に惑わされる。
かまぼこのように切ってしまった石 小池一誠 《No.1 石》
小池は人間も石と同じ世界の一部ととらえ、その人間が自然とどう関わりあえるかという意識に基づいて制作に取り組んだ。石をまるでかまぼこか何かのように切ったこの作品もまた、「見る」という習性に疑いを向け、身体や想像力を世界に向けて開示しようと、自然と関わりあった作家の行為の痕跡ともいえる。
本物の箱みたいだ! 丹羽勝次 《箱シリーズ '68》
人間の眼の錯覚を利用して、二次元のイメージを三次元の立体に見せかけた作品。表面に取り付けられた梱包用の紐によって、立体感はいっそう際出っている。絵画の歴史において長らく三次元空間を二次元化する技法として用いられてきた遠近法を逆用することで、絵画のメカニズムそのものをあぶりだしている。
描かれた名画のイメージ 鈴木慶則 《非在のタブロー(キリコによる)》
額縁入りの絵画とイーゼルの組み合わせからなるこの作品は、絵画の右半分にジョルジオ・デ・キリコが描いた絵画のモチーフが写され、もう半分にキャンヴァスの裏側が描かれている。いわゆる名画の原物の鑑賞価値は剥ぎ取られ、とり残された図像のイメージが、キャンヴァスの裏地と同等に、作品の一部を構成する素材として扱われている。
ものさしになった遠近法 前田守一 《遠近のものさし(折り尺)》
平面上に虚構の空間を作りだす絵画技法である線遠近法を、プラスティックのものさしに置き換えて、現実の空間に出現させたもの。ただし、ものさしに書き込まれた目盛りや数字は実体に基づくものではなく、イメージに過ぎない。作品が示す不確かな目盛りや数字は、われわれに視覚のあいまいさをあらためて気付かせてくれる。
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静岡県立美術館 学芸課
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