個性おどる作品たち
コレクションの中のコレクション
小杉文庫
江戸後期〜明治期の国学者、小杉榲邨の収集品で、重要文化財をふくむ古代・中世の書、本居宣長、賀茂真淵ら江戸時代の国学者の書などからなる。森町の藤江家に伝来し、開館前の1980年、同家から譲り受けた。当館最初の蔵品で全347件(購入6件、寄贈341件)。
かつては正倉院にあった 《天平勝宝四年東大寺写経所請経文》〈重要文化財〉
元来は正倉院にあった文書。東大寺大仏開眼供養会に使用するため、東大寺写経所が大般若経(光明皇后の所持経と推定)と花厳経(聖武天皇の生母中宮宮子の所持経)とを、外嶋堂、松本宮より借用し、終了後これらを返却した旨を記した記録文書。
天平時代の貴重な記録 《天平四年山背国愛宕郡計帳断簡》(第一断簡)〈重要文化財〉
正倉院に現存する山背国愛宕郡計帳の断簡。計帳は戸籍とならぶ律令国家の民政上の基本帳簿で毎年作成された。
優雅!さらさらよどみない平安の仮名文字 《古今和歌集巻第一断簡(亀山切)》
古今集巻第一春歌上、よみ人知らずの和歌三首。雲母を散らした和紙に、流麗優雅な書が美しく映える。断簡・切とは、数行を切断し鑑賞用としたもので、最終行手前の縦線が冊子の折目の痕跡。紀貫之筆と伝える亀山切の一つで、平安時代11世紀半に書写された。
のへちかく いへゐしせれは うくひすの なくなるこゑは あさなゝゝきく
かすかのは けふはなやきそ わかくさの つまもこもれり われもこもれり
かすかのゝ とふひのもりを いてゝみよ いまいくかありて わかなつみてむ
豪華な料紙に映える力強い鎌倉時代の書 《後嵯峨上皇幸西園寺詠翫花和歌》〈重要文化財〉
宝治元年(1247)、京都北山にあった西園寺実氏の別邸に後嵯峨上皇が行幸、その折の和歌会で詠まれた和歌13首と実氏の真名序(漢文の序)を収める。薄茶地の染紙に雲母で竹梅唐草文を刷りだした豪華な料紙に、鎌倉時代の雄渾な書が映える。金沢文庫の旧蔵。
山下一郎コレクション
明治年間、東京・日暮里で表具師を営んでいた山下兼吉(1888〜1943、洋画家・山下新太郎の弟)が収集した絵画等110件から構成される。椿椿山の作品が多数含まれている。昭和62年度、ご子息・山下一郎氏より一括寄贈を受けた。
近代歴史画のさきがけ 菊池容斎 《蒙古襲来之図》
「元寇」として知られる鎌倉時代の「文永・弘安の役」に取材した歴史画。暗雲が立ちこめ、松林が激しい風に煽られる中、様々な甲冑を身に纏った軍兵たちが、岸辺から沈みゆく船を見守る場面を劇的にとらえている。近代歴史画のさきがけをなす容斎の代表作。
透明感ある軽やかな色彩、清らかな描写 椿椿山 《花卉図》
水仙・菊・牡丹などの様々な花を、写生をもとにした堅実な描写で描く。軽やかな色調は椿山の色彩感覚をよく表している。花や葉の描写には、輪郭線を省いた没骨描法(中国・明末清初の画家□南田が得意とした描法)が用いられ一層典雅な趣を高めている。
□…「小」へんに「軍」
鈴木万平・光コレクション
梅原龍三郎・香月泰男などの洋画、小野竹喬・東山魁夷などの日本画、駒井哲郎・長谷川潔などの版画等、小品ながら味わい深い優品に加え、古備前や古信楽の壷などの工芸作品が含まれた幅広いコレクション。鈴木万平氏と光ご夫妻が長年にわたり築いてこられたもので、昭和58年度、光夫人より寄贈を受けた。
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