オーギュスト・ロダン オンラインガイドブック
08 トルソ
トルソはイタリア語で「木の幹」という意味であるが、頭や手足を欠いた胴体像を指す用語として、現在わが国でも日常的に用いられている。
このトルソを、それ自体で完結した一作品として扱った最初の彫刻家がロダンである。ロダンは自らギリシア彫刻の断片を収集し、その魅力を深く感じとっていた。ロダンは、壊れたギリシアの彫像のごく小さな断片にさえ、それぞれの美が宿っていると感じていた。したがって、ロダンにとって、それまで習作や試作に過ぎなかったトルソに美を見出すことは、ごく自然なことであった。
同時代の画家ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの記念碑の一部となる予定であった≪永遠の休息の精≫は、未完の記念碑の一部であり、きわめて不安定な印象を与える。台によって支えられる予定であった右腕は宙に浮き、あやうい均衡のもとに青年は立っている。それがむしろ初々しい印象を与えており興味深い。≪<永遠の休息の精>のトルソ≫は、そのエッセンスだけを抜き出したような作品である。両腕と頭部がなくなり、純粋に胴の造形が作り出す美しいラインとその動きがはっきりと伝わってくるのである。このように、彫刻の動感と線の流れがよく伝わるということがトルソの表現の利点である。
≪ヴィクトリア・アンド・アルバートと呼ばれる女のトルソ≫は、この作品の寄贈先の美術館名で呼ばれている(1937年にテイト・ギャラリーに移管された)。本作における女性の後ろ姿は、安定と調和の美しさを感じさせる。人物の動きの感覚が面白い≪永遠の休息の精≫とはまた違った魅力を見せている。
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