オーギュスト・ロダン
《花子のマスク》
1908-12頃
ブロンズ
55×39×29cm
当館蔵
平成3年購入
明治時代、ヨーロッパで活躍した女優・花子。その苦悶の表情を、ロダンは飽くことなく作り続けた。ところで、森鷗外は短編小説「花子」を書いている(明治43年7月「三田文学」発表)。アトリエを訪れた花子を見てロダンは、皮膚の下に筋肉、腱、骨、関節を透かし見、「形の上に透き徹って見える内の焔が面白いのです」と生命の造形論を語る。鷗外の筆は終始、論理的、客観的である。同年11月に「白樺」がロダン特集を組み、熱狂的なロダンブームが到来するが、鷗外の冷静さはきわめて対照的だ。それを後に、「まことに簡にして要を得た小説」と評したのは、高村光太郎である。
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(当館主任学芸員 堀切正人) |
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