1966年、静岡と清水を拠点に活動する若手美術家が集い、グループ「幻触」が結成されました。高度経済成長を成し遂げつつあった1960年代後半の日本では、拡大、開発が進む一方で、今ある社会や制度を疑い、省みてみようという時代の気分が高まっていました。この時代精神を汲んだグループ「幻触」の若い作家達は、自分たちの課題として「表現とは何か」「見ることとはどういうことか」という美術の制度そのものへの問いと格闘しました。彼らの求心力となったのが、一時期、東京から清水に移り住んでいた評論家の石子順造です。石子の思考を消化した彼らの作品には、見る者の視覚の習性に揺さぶりをかけようと目論んでいるかのように、共通して、トリック的なひねりの要素が見られます。
平成17年度新収蔵品として加わった、これらグループ「幻触」の一連の作品は、戦後地方都市でおこった先鋭的な美術の動向や時代の気分を今に伝える、貴重な当時のオリジナルの作品です。
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(当館学芸員 川谷承子) |
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